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天狐あやかし秘譚
第94章 神機妙算(しんきみょうさん)
☆☆☆
私達は、中華レストランの個室を出ると、そのままひとつ上の階にあるラウンジに行くことにした。宝生前と別れたくなかったから、というのももちろんあったが、今しがたの出来事に対する互いの意見のすり合わせをしたいというのが本音だった。
ラウンジにて、私はダージリンティーを、宝生前はブラックコーヒーを注文していた。本当は甘いものは別腹とばかりに、ケーキセットにしてモンブランもと思ったのだが、『まだ食うのか』と思われたくないという乙女心が食欲を制することに成功した結果だ。
注文を終えると、早速、話題は先程のことになる。
「宝生前さんは、どう思ったのですか?」
「質問をするな、とは言いましたが、私が雑談の中で自分の休日の過ごし方を話した時、彼も『自分は休日はゴルフなどを楽しむ』等と言ってましたね。別に話をすること自体には問題はないみたいです。ただ、特定の話題を避けている・・・ようには感じました。」
それは私も同感だ。
彼には細君も幼い子どももいるはずだが、家族の話題はとんと出なかった。
「土門様がうっかりしてしまった質問にも、若干、眉をひそめはしましたが、普通に回答していたように思います。質問がなにかの呪術のキーになっている、わけでもないようです。」
「霊視しても特に、邪気や穢れは感じなかったのです」
「私にも感じられませんでした」
そうなのだ、彼が被っていると言っている呪いだが、その残滓のようなものは一切検知できなかったのである。通常はどんなに隠しても、『呪い』が存在、しかも、本人に検知できる形で作用するような呪いがあるなら、術者に感知できないことなどありえないのだ。術者に感知できないほどの微弱な呪いなら、それは本人に対する作用もたかが知れているはずである。
「それで?宝生前さんの結論は?」
「・・・私の推測が正しければ、土門様の占術と私の推測は同じ結論なのではないかと思いますがね・・・」
ここまで話した時、丁度、互いの飲み物が席に届いた。ダージリンはポットで給されてきたので、それをゆっくりとカップに注ぐ。シャンパンのような良い香りが立ち昇ってきた。
宝生前が優雅な手つきでカップを傾け、琥珀色のコーヒーを口に運ぶ。
私達は、中華レストランの個室を出ると、そのままひとつ上の階にあるラウンジに行くことにした。宝生前と別れたくなかったから、というのももちろんあったが、今しがたの出来事に対する互いの意見のすり合わせをしたいというのが本音だった。
ラウンジにて、私はダージリンティーを、宝生前はブラックコーヒーを注文していた。本当は甘いものは別腹とばかりに、ケーキセットにしてモンブランもと思ったのだが、『まだ食うのか』と思われたくないという乙女心が食欲を制することに成功した結果だ。
注文を終えると、早速、話題は先程のことになる。
「宝生前さんは、どう思ったのですか?」
「質問をするな、とは言いましたが、私が雑談の中で自分の休日の過ごし方を話した時、彼も『自分は休日はゴルフなどを楽しむ』等と言ってましたね。別に話をすること自体には問題はないみたいです。ただ、特定の話題を避けている・・・ようには感じました。」
それは私も同感だ。
彼には細君も幼い子どももいるはずだが、家族の話題はとんと出なかった。
「土門様がうっかりしてしまった質問にも、若干、眉をひそめはしましたが、普通に回答していたように思います。質問がなにかの呪術のキーになっている、わけでもないようです。」
「霊視しても特に、邪気や穢れは感じなかったのです」
「私にも感じられませんでした」
そうなのだ、彼が被っていると言っている呪いだが、その残滓のようなものは一切検知できなかったのである。通常はどんなに隠しても、『呪い』が存在、しかも、本人に検知できる形で作用するような呪いがあるなら、術者に感知できないことなどありえないのだ。術者に感知できないほどの微弱な呪いなら、それは本人に対する作用もたかが知れているはずである。
「それで?宝生前さんの結論は?」
「・・・私の推測が正しければ、土門様の占術と私の推測は同じ結論なのではないかと思いますがね・・・」
ここまで話した時、丁度、互いの飲み物が席に届いた。ダージリンはポットで給されてきたので、それをゆっくりとカップに注ぐ。シャンパンのような良い香りが立ち昇ってきた。
宝生前が優雅な手つきでカップを傾け、琥珀色のコーヒーを口に運ぶ。

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