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天狐あやかし秘譚
第96章 純情可憐(じゅんじょうかれん)
☆☆☆
歌が響いていた。
その歌は誰にも聞こえないものだった。
星の見えない新宿の夜。西洋の屋敷を模したラブホテルの破風の上、幼女神が座って空を振り仰ぐ。
その顔はなんだか機嫌が良さそうで、口元からあふれる歌は楽しげだった。
『七つとや 何よりめでたい
お酒盛り お酒盛り
三五に重ねて 祝いましょ 祝いましょ』
首をゆっくり左右に揺らしながら、小さな口を開けて歌っていた。
『八つとや やわらこの子は
千代の子じゃ 千代の子じゃ
お千代で育てた お子じゃもの お子じゃもの』
お約束は・・・果たせたかしら?
ね?杏里ちゃん・・・
『九つとや ここへござれや
姉(あね)さんや 姉さんや
白足袋(しろたび)雪駄(せった)で ちゃらちゃらと ちゃらちゃらと』
遊んでくれて、ありがとうね・・・
お歌を教えてくれて、ありがとうね・・・
『十とや 歳神様(としがみさま)の
お飾りは お飾りは
橙(だいだい) 九年母(くねんぼ) ほんだわら ほんだわら』
少し、びっくりしたのよ?
だって、だって・・・ずっと大きくなったあなたお願いも
同じだったから・・・
同じ人との縁を結んでと、言っていたから。
『十一とや 十一吉日(きちにち)
蔵開き 蔵開き
お蔵を開いて 祝いましょ 祝いましょ』
ふふふ・・・
もう、縁はあの時繋いだもの。
今回のお願い、私は何もしていないわ・・・
だから・・・
「今の幸せは、あなたが掴んだのよ?」
ね、土門杏里ちゃん
歌が響く。夜空に、誰にも聞こえない歌。
人と人の縁を結ぶ、菊理媛の歌。
神様の歌声が、優しく街に流れている。
『十二とや 十二の神楽(かぐら)を
舞い上げて 舞い上げて
歳神様へ 舞納(まいおさ)め 舞納め・・・』
歌が響いていた。
その歌は誰にも聞こえないものだった。
星の見えない新宿の夜。西洋の屋敷を模したラブホテルの破風の上、幼女神が座って空を振り仰ぐ。
その顔はなんだか機嫌が良さそうで、口元からあふれる歌は楽しげだった。
『七つとや 何よりめでたい
お酒盛り お酒盛り
三五に重ねて 祝いましょ 祝いましょ』
首をゆっくり左右に揺らしながら、小さな口を開けて歌っていた。
『八つとや やわらこの子は
千代の子じゃ 千代の子じゃ
お千代で育てた お子じゃもの お子じゃもの』
お約束は・・・果たせたかしら?
ね?杏里ちゃん・・・
『九つとや ここへござれや
姉(あね)さんや 姉さんや
白足袋(しろたび)雪駄(せった)で ちゃらちゃらと ちゃらちゃらと』
遊んでくれて、ありがとうね・・・
お歌を教えてくれて、ありがとうね・・・
『十とや 歳神様(としがみさま)の
お飾りは お飾りは
橙(だいだい) 九年母(くねんぼ) ほんだわら ほんだわら』
少し、びっくりしたのよ?
だって、だって・・・ずっと大きくなったあなたお願いも
同じだったから・・・
同じ人との縁を結んでと、言っていたから。
『十一とや 十一吉日(きちにち)
蔵開き 蔵開き
お蔵を開いて 祝いましょ 祝いましょ』
ふふふ・・・
もう、縁はあの時繋いだもの。
今回のお願い、私は何もしていないわ・・・
だから・・・
「今の幸せは、あなたが掴んだのよ?」
ね、土門杏里ちゃん
歌が響く。夜空に、誰にも聞こえない歌。
人と人の縁を結ぶ、菊理媛の歌。
神様の歌声が、優しく街に流れている。
『十二とや 十二の神楽(かぐら)を
舞い上げて 舞い上げて
歳神様へ 舞納(まいおさ)め 舞納め・・・』

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