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天狐あやかし秘譚
第92章 寤寐思服(ごびしふく)
「あ・・・んっ♡」

何故か触られている俺ではなく、触っている日暮の方が色っぽい吐息を吐く。遠慮がちに右手だけで触っていたのが、いつの間にか両手で俺のちんぽを包み込むように、ゆっくりゆっくりと撫でてくる。まるで、俺のちんぽの形を両手でじっくりと確かめているみたいだった。

「うぅっ・・・!」

こんな風に女性に『ソコ』を触られたことなどもちろんない。興奮しているからなのか、ぎゅうっとお腹の中が縮こまるような奇妙な感覚を感じ、とうとう俺は、喘ぎ声というか、うめき声を上げてしまう。

「あっ・・・えと・・・痛・・・かったですか?」

日暮の手が止まる。俺が黙って首を振ると、少しホッとしたような声を漏らし、再びゆっくりゆっくりと俺のちんぽを触ってくる。左手で竿を、右手で睾丸をクニクニと優しく弄ばれ、次第に俺の方が余裕がなくなってきてしまう。

「うぅう・・・も・・・もう・・・っ!」

びゅっ・・・びゅっ!

とうとう俺は日暮の手に射精をしてしまう。これまでに、もちろんオナニーの経験はあったが、今までしたどんなオナニーよりも気持ちよく、そして、長い射精だった。

「きゃっ!・・・あ・・・熱い・・・っ!」

石鹸とは違うぬめりを帯びた液が、日暮の手を汚していく。

「御九里さん・・・」

呆然と、日暮の白い手にかかるねばっこい精液を眺めていたとき、不意に声をかけられ、思わず俺は、彼女の方を振り返ってしまう。そこにはうるんだ目で俺を見つめる、日暮の顔があった。ルージュのせいだろうか、唇はふるんとして、濡れて輝いているように見えた。

胸がドキドキするのが止められない。俺の方からだろうか、日暮の方からだろうか、それとも双方からか・・・ゆっくりと二人の顔が近づいてきて・・・ついにその唇が触れ合う。

最初は軽く・・・しかし、すぐにどちらからともなく深く口づけをする。舌が絡み合い、互いの唾液が流れ込み、唇の端からも溢れ、流れ落ちてしまう。これまで経験したことがないようなキスを、一度、そして、二度・・・一旦唇を離しても、彼女がまた唇を押し付けてくる。

「み・・・くりさん・・・わ、私・・・私・・・」

言葉にならないのか、思いが溢れてしまっているのか、彼女はさらに二度、三度と唇を押し付けてくる。

「御九里さん・・・もっと・・・もっと・・・
 こっちを向いて・・・」
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