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千一夜
第48章 第7夜 訪問者 正体
「やっぱり私の勝ちだわ」
「駅弁に勝ち負けなんてないよ」
「あるわよ。亮ちゃんの東海道新幹線弁当も悪くないわよ。でもいかにも駅弁ていう感じでしょ? 丁寧に作っているのはわかるけどもう少し奇をてらってもいいんじゃない?」
「駅弁は駅弁さ。駅弁は受けを狙う必要なんかない。咲子の駅弁は駅弁の域を超えている。豪華すぎるよ。そういうのはお店で食べるべきだ」
 今咲子は浅草今半のすき焼き弁当を咀嚼している。
「本来お店で食べるものを新幹線の中でも食べることが出来るようにしたのは浅草今半よ。亮ちゃんは、そういうところの評価を忘れているわ」
「確かに美味そうだ」
 いや、間違いなく美味いだろう。
「ねぇ亮ちゃん」
「何?」
「その穴子貰っていいかな?」
「どうぞ。何でも食べてください、お姫様」
「バカ」
 咲子はそう言って私の弁当の穴子に箸を伸ばした。
 私は咲子のそういうところが好きだ。咲子と北海道を旅をしたときも、咲子は私に遠慮することなく好きなものを食べ、好きなものを飲んでいた。よく言えば天真爛漫。悪く言えば……それを言うのは止しておく。
「これ見てくれよ」
 私は交流会で貰った名刺をテーブルの上に置いた。
「名刺?」
 咲子はそれらをちらりと見てそう言った。
「国会議員や会社の役員、それからどこかの病院の理事長の名刺。これを俺に渡したOBはみんなこう思っているよ『この名刺を君が持っていても意味がない。遠山機械工業会長に渡してくれ』とね」
「亮ちゃん、いじけてるの?」
「いいや。いじけてなんかいないさ。でもこの名刺を見ると気が重くなる」
「だったらいいものを見せてあげる」
 咲子はスマホを取り出して画面をスクロールした。探し出したものを見つけると、咲子はスマホを私に見せた。
「私、これをやろうと思って」
「何だよこれ?」
「フィジーク」
「フィジークって何?」
「ジムで体を鍛えるの。美しい体になるためよ」
 咲子は人差し指を動かしてスアホの画面を切り替えていった。
「裸じゃないか!ダメダメ絶対にダメ!」
「大きな声出さないで。でもビキニ着てるわよ」
「無理だ。絶対に無理。こんなの……こんなのは会長だって許さないから。それに君の体は今でも十分美しい」
 東京駅のホームで、私たちに駅弁の入った紙袋を渡した沢田絵里のことは、私と咲子からすっかり消えていた。

 
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