この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第48章 第7夜 訪問者 正体
 街の権力者のためにマスコミがあるわけではない。もちろん、私の他に市長選に出馬する人間が出てきたなら、その人物の人となりをテレビ局も新聞社も公平に取り上げる。
 テレビで流される映像の時間に多少の差は出るかもしれない。新聞の紹介記事の字数も少なくなるかもしれない。それをフェアかフェアでないかの判断は有権者に委ねられる。
 だが遠山の城下町では、新聞に載った私と他の候補者の写真の大きさを定規を使って計る人間はいないし、句読点を含めて文字の数を数える暇な人間はいない。なぜなら遠山の繁栄こそが街の発展に繋がる、遠山なくして街は存在しない。市民はそれを知ってる。
 KW戦の後に、都内のホテルでM会が主催する交流会が開かれた。私も大学卒業後にM会に所属したが、これだけ大きな交流会は初めてだった。
 出席者も錚々たる顔ぶれであった。国会議員や上場企業の役員、そして医学の世界からも多くの卒業生が集っていた。
 大連合M会会長のYAが水割りの入ったグラスを持って壇上に上がった。そのとき、YAは私と咲子を呼んだのだ。私は心臓が止まるかと思った。格が違う。壇上に上がる資格など私にはない。私は首を横に振って遠慮した。だがYAはそれを許さなかった。
「早く来なさい、長谷川君。綺麗な奥様の手を繋いでくればいいんだ」
 YAがそう言うと会場に笑いが起こった。
 行かないわけにはいかない。さすがに咲子の手を繋ぐことはできなかったが、私と咲子はYAの待つ壇上に向かった。私が歩き出すと咲子は私の後ろをついてきた。
「皆様に紹介します。○○県○○市の市長候補長谷川亮太君です。ええ、長谷川君は本学の経済学部の卒業生であります。そして奥様の咲子さんです。咲子さんは遠山機械工業会長遠山高獅さんのご令嬢でありまして、本学出身の長谷川君が見事に咲子さんのハートを射止めたわけであります。よくやった長谷川君、それでこそKボーイだ」
 会場が爆笑で包まれる。間を取ってYAが続けた。
「本日、神宮球場では我がK大はにっくきW大に負けてしましましたが、何だか負けた気がしない。そうでしょうみなさん、だってここに勝った男がいるんですよ。ざまぁみろだW大学」
 また爆笑。
 笑いを取りながら話を進めていくYA。どこかで聞いたような……。
 ただ、私は生きた心地がしなかった。
 これを仕組んだのは沢田絵里だった。
/586ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ