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千一夜
第47章 第七夜 訪問者 疑惑
 咲子の父が、沢田絵里について話したのはそれだけだった。どういう経緯で絵里が遠山に近づくことができたのか、なぜ絵里が私の市長選のサポートをするに至ったのかのついては、咲子の父は何も話さなかった。
 おそらく咲子はそれについて父に訊ねることをしなかった。いやいやできなかったのだ。咲子がその話を持ち出す前に、咲子は父から叱られたのだろう。そんな後で沢田絵里のことを訊ねることなんてできない。何となくだがそういう様子が私の頭に浮かんだ。
 席に戻ると私のデスクの上に部下が書いた送別会のスケジュールが置かれていた。次期市長の送別会は今のところ三回予定されているようだ。
 週が明けると正式に現市長の退任の会見、そして私の出馬会見が同時に行われる。その出馬会見の中で私は咲子との婚約を発表する。
 今、自分の身に起こっていることが正直信じられない。私が市長になるなんて、そして遠山家のお嬢様と結婚するなんて。
 現実を飲み込めない人間が私の他に二人いた。それは私の両親。
 仕事を終えて家に帰り、私は両親の家に電話した。役所を辞め市長選に出馬すること、咲子と結婚することを伝えると父は私にこう言った。
「親に嘘をつくなんて情けない奴だ。役所は辞めたんじゃなくて辞めさせられたんだろう。何をやらかした? それをごまかすために市長になるなんて言っているんだろ。それからお前に言っておく、冗談でも遠山様の名前なんか出すんじゃない、馬鹿者が!」
 腕時計で時間を計っていたわけではないが、私と父のやり取りは十分から十五分くらい続いたかと思う。
「本当のことだ」「嘘をつくな」何度これが繰り返されただろうか。
 翌朝五時、私は両親によって起こされた。眠い目をこすりながら玄関のドアを開けると私の父と母がそこに立っていた。父はスーツを着て、母はベージュのフォーマルドレスを着ていた。
「遠山様のお嬢様と結婚すると言うのは本当なんだな?」
 父は私の顔を見てそう言った。
「そんな格好してどこに行くつもりんなんだよ?」
「遠山様のお嬢様のことを訊いていいるんだ。答えろ!」
 警察官の尋問はこんな感じなのだろうか。ちなみに私の父は警察官ではない。
「昨日も言ったじゃないか、本当のことだ。市長戦に出馬する。そして遠山咲子と結婚する」
 それをきいて父は、糸が切れたマリオネットのように腰を抜かした。
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