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千一夜
第47章 第七夜 訪問者 疑惑
「座りなさい」
 咲子の父は自分の前に座るように私に命令した。話が長くなるのだろうか。
「失礼します」
「困ったことになったよ」
 遠山高獅は私が座るのを待ってそう切り出した。
「困ったこと?」
「ああ」
「困ったこととは一体何でしょうか?」
「君の他に市長戦に出る人間がいない」
「……」
「あの政党も立候補者を擁立しようとしたが、どうやら出馬を打診したすべての人間に断られたようだ」
「……」
 負け戦にのこのこ出て行く人間はこの街にはいない。遠山を相手に選挙に出てくれと言われて「はい」と返事をする人間は大馬鹿者だ。
 遠山機械工業にもかつては労働組合があった。が、今遠山の社内で組合活動をしている人間は一人もいない。
 給料は高くて福利厚生も充実している。そういう企業は離職率も低い。一見咲子の父が一人で会社を牛耳ってるかのように見えるが、遠山の社内には自由という風がいつも吹いている。風通しがいい会社に不満を持つ社員はいない。
 遠山機械工業にはシニアラボという施設がある。会社を退職した研究者が自由に使うことができる研究棟を咲子の父が作った。
 研究者はときに孤独になる。研究だけに生きてきた人間は、退職したからといって研究をやめるわけではない。研究者は生涯研究者であり続けるのだ。
 研究者に限らず、遠山機械工業を退職した者たちにも遠山の運動や文化施設を利用することが許されている。
「このままでは無投票になる」
「……」
 私はどう答えていいのかわからなかった。「そうですね」とも言えないし「良かったじゃないですか」では今の咲子の父の機嫌をさらに悪くするに違いない。
「君には選挙を経験して欲しかったんだ。役所に勤めているだけでは見えない市民の姿や、市民の生の声に耳を傾ける絶好のチャンスだった。残念で仕方がない。」
「はい」
「まぁ、どうなるかわからんが準備だけは怠るな。わかったな」
「はい」
 おそらく選挙はないだろう。咲子の父はこの街のことをすべて把握している。そしてすべての情報が咲子の父に届いていいる。だから私に選挙はないと言ったのだ
「会長」
 気になることが一つ。それを咲子の父に訊ねる。
「何だ」
「選挙がないとなると、沢田絵里さんは……」
「ああ、彼女のことか。君が市長になるまで君と咲子の傍にいてもらうことにした。不満か?」
「いいえ」


 
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