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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「支援を打ち切るだけでは私の腹の虫がおさまらん。だから追い出してやった。もちろんこの男を私に紹介した阿呆にもくずと同じくらいの罰を与えた」
「追い出す……とは」
「簡単だ。津島は生きている限りトーナメントには出られない。もちろんレッスンプロになることも私は許さん。私は津島を真っ当なゴルフの世界から消去した」
「……」
「まさか同情しているのではないだろうな」
「いいえ」
「同情などあの男には必要ない。奥さんも子供もいるのに私の娘だと知りながら咲子と寝たんだ。つまり私は津島に侮辱されたんだよ」
「……」
何となくそうだとは思っていたが、これから咲子と一緒になる私に、どうして咲子の過去をわざわざ教えるのだろうか。
咲子の父はスマホを手にした。
「おい、私の鞄を持ってきてくれ」
咲子の父はそう言って誰かを呼び出した。
「失礼します」
数秒後、三十代後半くらいの男が鞄を持って部屋に入ってきた。咲子の父を一秒でも待たせてはいけないというルールがもしかしたらあるのかもしれない。
男は鞄を咲子の父に渡すと、咲子の父と私に向かって深く頭を下げた後部屋を出て行った。
「読んでみなさい」
咲子の父は鞄から書類の束を出して私に渡した。
「拝見します」
正直読みたくはなかったが、読まないわけにはいかない。
「津島が咲子と別れてから何をしていたのか、そして今何をしているのかそこにすべて書いてある。津島の奥さんは津島とは別に暮らしている。離婚も成立したようだ」
「賭けゴルフ!」
いの一番でその文字が私の目に飛び込んできた。
「そうだ。今くずは賭けゴルフで食いつないでいる」
「賭けゴルフって違法……」
「その通りだ。今くずが賭けているのは晩飯なんかじゃない。勝てば福沢諭吉、じゃなくて渋沢栄一が何枚か懐に入ると言うゴルフだ。かつてプロゴルファーだったくずの顔を知っている人間なんてごくわずかだ。いやいやほとんどいない。最初は右に左にわざと曲げて打つ。パットもラインを故意に読み間違える。だが後半じりじり追い上げて最後に勝つ。これがくずの賭けゴルフだ」
「……」
「残念ながら賭博の罪だけではくずを刑務所にぶち込むことはできない。ただ、それにも書いてあるが、くずの違法行為はそれだけではない」
「地面師!」
センセーショナルな言葉が次から次へと私の目に入ってくる。
「追い出す……とは」
「簡単だ。津島は生きている限りトーナメントには出られない。もちろんレッスンプロになることも私は許さん。私は津島を真っ当なゴルフの世界から消去した」
「……」
「まさか同情しているのではないだろうな」
「いいえ」
「同情などあの男には必要ない。奥さんも子供もいるのに私の娘だと知りながら咲子と寝たんだ。つまり私は津島に侮辱されたんだよ」
「……」
何となくそうだとは思っていたが、これから咲子と一緒になる私に、どうして咲子の過去をわざわざ教えるのだろうか。
咲子の父はスマホを手にした。
「おい、私の鞄を持ってきてくれ」
咲子の父はそう言って誰かを呼び出した。
「失礼します」
数秒後、三十代後半くらいの男が鞄を持って部屋に入ってきた。咲子の父を一秒でも待たせてはいけないというルールがもしかしたらあるのかもしれない。
男は鞄を咲子の父に渡すと、咲子の父と私に向かって深く頭を下げた後部屋を出て行った。
「読んでみなさい」
咲子の父は鞄から書類の束を出して私に渡した。
「拝見します」
正直読みたくはなかったが、読まないわけにはいかない。
「津島が咲子と別れてから何をしていたのか、そして今何をしているのかそこにすべて書いてある。津島の奥さんは津島とは別に暮らしている。離婚も成立したようだ」
「賭けゴルフ!」
いの一番でその文字が私の目に飛び込んできた。
「そうだ。今くずは賭けゴルフで食いつないでいる」
「賭けゴルフって違法……」
「その通りだ。今くずが賭けているのは晩飯なんかじゃない。勝てば福沢諭吉、じゃなくて渋沢栄一が何枚か懐に入ると言うゴルフだ。かつてプロゴルファーだったくずの顔を知っている人間なんてごくわずかだ。いやいやほとんどいない。最初は右に左にわざと曲げて打つ。パットもラインを故意に読み間違える。だが後半じりじり追い上げて最後に勝つ。これがくずの賭けゴルフだ」
「……」
「残念ながら賭博の罪だけではくずを刑務所にぶち込むことはできない。ただ、それにも書いてあるが、くずの違法行為はそれだけではない」
「地面師!」
センセーショナルな言葉が次から次へと私の目に入ってくる。

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