この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
 自慢するわけではないが、私の出身高校は県内で一番の進学高校だった。だった……、残念ながら私の母校は、一番の座を今年他の高校に奪われてしまったのだ。
 その高校は、五年前まで募集定員を確保するのに四苦八苦していた私立高校だ。野球やサッカーで全国に名をとどろかせたことなど一度もない。大学進学者も年に数人いるかいないか。特色のない学校は受験生の目を引き付けない。そんな学校を遠山高獅は手に入れた。いや、正確に言えば、遠山は見通しの暗い学校経営を押し付けられたと言った方がいい。
 遠山はまず最初、理系の授業をテコ入れした。数学や物理、そして化学の優秀な指導者を全国から集めた。そしてアメリカからは英語の補助教員を連れてきた。特にこの英語の補助教員にはノルマを課した。英語に親しむだけの授業を遠山は許さない。高校二年までに全生徒が英検〇級の合格、ないしはTOEICのスコア〇〇〇点以上取ることををこの補助教員に命じた。
 多額の報酬だけでなく、目に前にランボルギーニが買えるくらいのボーナスがぶら下がると、物見遊山できた補助教員の目の色も変る。人間は必死になると考える。そうなると日本文化を田舎でのんびり楽しみながら、週に一度か二度の授業を「ハロー」とにっこり笑って終わらせることができなくなる。時間は有限ではないからだ。
 遠山の改革が行われてから三年後、三十数名の生徒たちが、私の母校K大学、そしてW大学に合格した。四年後には地方の国立大学の医学部に七名の合格者を出すまでに至った。
 遠山の改革から五年後の今年、なんと地方の無名だった私立高校から東京大学理科三類に二名、そして文化一類に七名、文化三類には四入学した生徒は必ず週二回の部活動かボランティア活動をしなければならない。そして年に一度遠山機械工業の研究者が講演にやってくる。講演者は最後にいつもこう言う。
「影を踏ませるな。最先端であり続けろ」
 これは遠山高獅の言葉だ。
/532ページ
※結果は非表示に設定されています
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ