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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「君は津島幸太郎という男を知っているか?」
「津島……幸太郎ですか?」
咲子の父はいきなり私の知らない男の名前を言った。
「ゴルフをしている君でも津島なんて知らなくて当たり前だ。二人目のくずだ」
「二人目……?」
それは咲子にとって二人目という意味なのだろうか。
「トーナメントに出る男子のツアープロは何人いると思う?」
「ツアープロですか? さぁ?」
「実は私も正確な数字を知っているわけではない。千人、ひょっとしたら二千人いるかもしれない」
「そんなに多いんですか?」
「そこで君に一つ質問をする。プロゴルファーは何で食っている?」
「試合の賞金……じゃないでしょうか」
プロゴルファーがバイトをしているなんて聞いたことがない。
「その通りだ。プロテストに合格したばかりの若造が大会にエントリーする。費用はいくらかかると思う?」
「費用?」
「そうだ費用だ」
「わかりません。でもプロなんですからスポンサーとかが出してくれるんじゃないですか?」
テレビに映るプロゴルファーの姿は優雅だ。金に困っているはずはない。
「勝てるかどうかわからない選手に金を出す企業があると思うか?」
「いえ……それは……」
「企業は博打をしているんじゃない。価値ある者には援助を惜しまなない。だが会社に金を運んでこないバカに資金提供する企業はない」
「……」
その通りだと思った。
「交通費、宿泊代、それにラウンドの費用とキャディ代。少なくとも大会に出るだけで五十万はかかる」
「ラウンドの費用も、でも賞金が貰えるんじゃないでしょうか」
「予選を通ればな」
「通らなかったら?」
「そのままお帰りいただくということになる」
「五十万円も費用が掛かっているのに?」
「主催者側には関係のないことだ」
「厳しい世界なんですね」
「厳しいのはプロゴルファーだけではない」
「……」
確かに楽して稼ぐことのできる仕事などない。
津島幸太郎が二人目のくず……つまり津島と咲子はどこかで接点があったということなのか。
「知り合いに頼まれてプロテストに合格した津島を私は支えた。いやいや支えてやったと言った方がいい。津島は今……四十五か四十六。咲子の歳にも近かったので、私は津島を信じて咲子を指導するように命令した。ところがあのくず、私の大事な娘に手を出した」
「手を出した……」
手を出すとは……。
「津島……幸太郎ですか?」
咲子の父はいきなり私の知らない男の名前を言った。
「ゴルフをしている君でも津島なんて知らなくて当たり前だ。二人目のくずだ」
「二人目……?」
それは咲子にとって二人目という意味なのだろうか。
「トーナメントに出る男子のツアープロは何人いると思う?」
「ツアープロですか? さぁ?」
「実は私も正確な数字を知っているわけではない。千人、ひょっとしたら二千人いるかもしれない」
「そんなに多いんですか?」
「そこで君に一つ質問をする。プロゴルファーは何で食っている?」
「試合の賞金……じゃないでしょうか」
プロゴルファーがバイトをしているなんて聞いたことがない。
「その通りだ。プロテストに合格したばかりの若造が大会にエントリーする。費用はいくらかかると思う?」
「費用?」
「そうだ費用だ」
「わかりません。でもプロなんですからスポンサーとかが出してくれるんじゃないですか?」
テレビに映るプロゴルファーの姿は優雅だ。金に困っているはずはない。
「勝てるかどうかわからない選手に金を出す企業があると思うか?」
「いえ……それは……」
「企業は博打をしているんじゃない。価値ある者には援助を惜しまなない。だが会社に金を運んでこないバカに資金提供する企業はない」
「……」
その通りだと思った。
「交通費、宿泊代、それにラウンドの費用とキャディ代。少なくとも大会に出るだけで五十万はかかる」
「ラウンドの費用も、でも賞金が貰えるんじゃないでしょうか」
「予選を通ればな」
「通らなかったら?」
「そのままお帰りいただくということになる」
「五十万円も費用が掛かっているのに?」
「主催者側には関係のないことだ」
「厳しい世界なんですね」
「厳しいのはプロゴルファーだけではない」
「……」
確かに楽して稼ぐことのできる仕事などない。
津島幸太郎が二人目のくず……つまり津島と咲子はどこかで接点があったということなのか。
「知り合いに頼まれてプロテストに合格した津島を私は支えた。いやいや支えてやったと言った方がいい。津島は今……四十五か四十六。咲子の歳にも近かったので、私は津島を信じて咲子を指導するように命令した。ところがあのくず、私の大事な娘に手を出した」
「手を出した……」
手を出すとは……。

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