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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「どう思う?」
 咲子の父の声が二人だけの空間で響いた。どっしりと重い声だった。
 どう思う? それは高彦と秀長のことをどう思うのかということだ。
「……」
 答えることはできない。どう思うのかと訊ねられても、そもそも私にはそれに答える資格がない。
「呆れたか?」
「いえ、そんなことは……」
 言葉が上手く出てこなかった。私は咲子の父が怖い。
「ふん、私が怖くて言えないか。まぁ、それならそれでいい。あの二人より咲子のことで君に言っておきたいことがある」
「咲子さんのことで?」
「そうだ」
「……」
 私はこの街一番の権力者の言葉を待った。
「君も知っての通り、咲子は離婚の経験がある。君はバツがついた女と結婚するのは嫌か?」
「そんなことはありません」
「だろうな。結婚したことがない五十前の男が、初婚だとか再婚だとかに拘ることなんかできないからな」
「……」
「咲子の相手はアメリカ人だった。その男は頭が悪くて何の能力もないくずだったよ。自分の娘がこんなつまらない男に引っかかったのかと思うと気が狂いそうだった。だってそうだろ、そのくずにとって咲子は都合のいい女に過ぎなかったんだからな」
「つまらない男……」
「だが三か月と持たずに咲子は私に泣きついた。咲子は『パパ御免なさい』と言って私に詫びた。私は咲子を許した。自分の娘だからな」
「……」
「相手の男はもう二度とこの世の楽しみを味わうことはない」
「……」
「どうしてか気になるか?」
「……」
 気になる。でもそれを声のすることはできなかった。
「そのくずはこの先アメリカの刑務所から生きて出ることはないからだ。確か懲役は二百三十五年だったかな。まぁ身に覚えのない罪が重なると懲役五年が二百三十五年になるんだが」
「身に覚えのない罪」
 咲子の父の言葉を復唱するのは二度目だ。身に覚えのない罪とはどういうことだ。
「アメリカにも私の知り合いの政治家が何人かいる。政治に口を挟むことはできないが、彼らにはプライベートなことで相談に乗ってもらっている。多少金はかかるが、それだって私の怒りを鎮めるのなら我慢できる。そうしないと私の怒りが収まらんからな。我慢ならんのは私の娘をおもちゃにした男がこの世界でのうのうと生きていくことだ。わかるか?」
「……」
 私はつばを飲んだ。
「私を怒らせたらただではすまん」 
「……」
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