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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「ウイーンフィルが演奏するベートーヴェンの交響曲7番。僕も行きたいな。なぁ、僕らも行かないか?」
 秀長は妻の一子を誘った。
「長谷川さんと一子の邪魔になるわ。それにチケットは完売したはずよ」
「だろうな。だったら長谷川さんの選挙が終わったら、僕たちはオーストリアに行こう。そこでウイーンフィルを聴けばいい」
「悪くないわね」
 一子はそう言うと食後のコーヒーに口をつけた。
「ところでお義兄さん、秋華賞楽しみですね。ボーダーブルーは順調に仕上がっていますか?」
 どうやら秀長は話を振る役なのかもしれない。
「まだ出るとは決まってないよ」
「でも獲得賞金では今のところ一番でしょ?」
「今のところね。これからどうなるかわからない」
「秋華賞を取れば目出度くお兄さんはG1勝利馬のオーナーとなるわけだ。羨ましいな」
「秋華賞にも出ていないのに羨ましいと言われてもね」
「すみません」
「……」 
 高彦は何も答えなかった。高彦はコーヒーではなくスコッチを飲んでいる。
 遠山家のダイニングテーブルについてるのは咲子の父と高彦夫婦、そして一子とその夫である秀長、それに私と咲子だ。
「ボーダーブルーって女の子よね」
 一子がいきなりそう言った。
「おいおい女の子はないだろ。牝馬だよ牝馬と言うんだ」
 秀長は一子にそう教えた。
「遠山の家は女が強いのよ。お父さんも兄さんもゴルフじゃ咲子にかなわないでしょ」
「ツアープロを目指したこともあるんだぞ。ハンデをいくらもらっても咲子には勝てない」
 高彦はちらりと咲子を見てそう言った。
 私は咲子を見た。愉快ではない話が振られてしまったと言う顔をしていた。
「長谷川君と話がしたい」
 咲子の父はいきなりそう言った。
「それじゃ、私たちは邪魔よ」
 黙っていた高彦の妻がようやく口を開いた。一秒でもこの場から離れたいと顔に書いてある。
「よし、それじゃあ僕らは失礼します」
 高彦がそう言うと、私と咲子を除く四人が席を立った。
「高彦、そして秀長君、あと一万頼んだぞ」
 咲子の父は二人に念を押した。
「はい」
「承知しました」
 高彦と秀長は順番にそう答えた。
 四人が部屋を出て行った。
「咲子、お前も外してくれ」
「どうして?」
「私は長谷川君に話があるんだ」
「私がここにいてもいいじゃない?」
「頼む。十分だけでいいんだ」
「わかったわ」
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