この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
「有権者数およそ二十五万人。投票率を五十%と見積もると、投票者の数は期日前を含めて十二万五千」
「甘いな。今度の市長選は長谷川君の信任投票のようなものだ。それに雨でも降れば投票率はもっと下がるだろう」
 遠山高彦は、一子の亭主遠山秀長にそう言った。遠山秀長はもと財務官僚で旧姓は宮田。今は一子と結婚して遠山の姓を名乗っている。
「そもそも長谷川君の対抗馬なんて出るのだろうか」
 秀長は高彦に食い下がった。
「出るよ」
 と高彦が言う。
「あの頑固なやつらでしょ?」
「そう、あの頑固なやつら。何が何でも長谷川亮太とは書かないやつら」
「あの政党の基礎票は五千。支持者の高齢化も進んでいるし、基礎票はもっと少ないかもしれない」
「三千くらいか」
「だったらもうすでに長谷川君の圧勝でしょう」
「捕らぬ狸の皮算用」
 咲子の父が高彦と秀長の会話を止めた。高彦と秀長は咲子の父の顔色を窺った。
「高彦、それから秀長君、君たちはそれぞれ何票持っているんだ?」
 そう言って咲子の父は二人を睨んだ。
「三万」
 高彦が最初にそう言った。
「私もお義兄さんと同じです」
 秀長が高彦に続いてそう言った。
「あと一万何とかしろ。それで八万。あとは参謀が何とかする」
 咲子の父は二人にそう命令した。
「わかりました」
「あと一万必ずお約束します」
 高彦、秀長の順番で答える。
「それから二人に言っておく。咲子は高彦と一子の妹だ。だが咲子と結婚する長谷川君は君たちより年上だ。わかるよな? 長谷川さんと呼べるのは私だけだ」
「……」
「……」
 高彦も秀長も何も言わずに咲子の父の次の言葉を待っている。
「君たちより年上の長谷川君が市長になるんだ。これからは長谷川君のことを長谷川さんと呼べ。そして市長になったら長谷川市長と呼ぶんだ。わかったか?」
「はい」
「はい」
 このときばかりは二人同時に返事をした。
 三十平米ある遠山家の会議室は席が円卓型になっていて、議長席に咲子の父が、私は咲子の父の右隣、高彦は左隣で、秀長は私の隣に座っている。ちなみにこの会議室には遠山機械工業の取締役であっても、遠山家の人間でないものは入ることができない。
 広い屋敷なのに息が詰まりそうだった。咲子とは結婚したい。だが私は遠山家とは距離を取りたいと思っている。多分咲子の父は私のそういう心を読んでいるだろう。
/532ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ