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千一夜
第43章 第七夜 訪問者 ゴースト
「ふざけてなんかいませんよ。だって遠山があなたについたのよ。負けるなんて100%ありません。よかったじゃん」
「そのコーヒーご主人にも作っているのか?」
私は香坂が手にしている水筒に目をやった。
「もちろん。というか私のコーヒー好きは主人のせいなのよ。いろいろ作ってもあのバカ、美味しいと一言も言ってくれないのよ。悔しいじゃない。だから一からコーヒーについて勉強しました」
「今は? ご主人は今君が作ったコーヒーを美味いと言ってくれるか?」
「残念ながらうちのバカはそういうタイプじゃないのよ。でも不味そうには飲んでないと思うわ」
「君たちはいい夫婦なんだろうな」
「ねぇ、一体どうしたの?」
「確か君の上のお子さんは大学生だよな? 名前は俊英君だ」
「大学二年よ。長谷川の後輩を目指したけど無理だったわ。今はA学院大学の商学部。それがどうかしたの?」
「下のお子さんの名前は優実さん?」
「そうよ。ねえ、長谷川どうしたのよ?」
「優実さんは今高校何年生だ?」
「来年受験よ。長谷川のK応は無理。せめて地元の国立に何とか潜り込んで欲しいと思っているわ。それより長谷川本当にどうしたのよ? 長谷川はうちの家庭環境に興味があるの?」
「大ありだ」
「どうして?」
私は香坂にどうしても言わなければならないことがある。
「もし、もし私が市長になったら私を手伝ってくれないか? 私を助けて欲しい」
「無理。絶対に無理」
「無理を承知で言っているんだ。香坂には副市長になって欲しい。頼む」
私は香坂に頭を下げた。
「止めてよ長谷川。私になんかに頭を下げないでよ。長谷川を補佐する適任者は他に何人もいるじゃない。その人たちにあたりなさいよ」
「いないよ」
「とにかく無理よ、ダメダメ」
香坂が席を立った。
「市長から何度か脅された」
私は香坂にそう言った。
「脅された? どういうこと?」
「今、体育館の館長のポストが空いているとね」
「長谷川、いつからあなたは情けない男になったの?」
「今かな……いや、ずっと前から私は情けない男だったかもしれない」
「長谷川には遠山ついているでしょ?」
「関係ない。市政は一企業の思い通りにはならない。たとえこの街が遠山の城下町でもだ。市の仕事は市民のためにある。市民のために全力を尽くす」
「遠山と戦うときが来るかもしれないわよ」
「覚悟している」
「そのコーヒーご主人にも作っているのか?」
私は香坂が手にしている水筒に目をやった。
「もちろん。というか私のコーヒー好きは主人のせいなのよ。いろいろ作ってもあのバカ、美味しいと一言も言ってくれないのよ。悔しいじゃない。だから一からコーヒーについて勉強しました」
「今は? ご主人は今君が作ったコーヒーを美味いと言ってくれるか?」
「残念ながらうちのバカはそういうタイプじゃないのよ。でも不味そうには飲んでないと思うわ」
「君たちはいい夫婦なんだろうな」
「ねぇ、一体どうしたの?」
「確か君の上のお子さんは大学生だよな? 名前は俊英君だ」
「大学二年よ。長谷川の後輩を目指したけど無理だったわ。今はA学院大学の商学部。それがどうかしたの?」
「下のお子さんの名前は優実さん?」
「そうよ。ねえ、長谷川どうしたのよ?」
「優実さんは今高校何年生だ?」
「来年受験よ。長谷川のK応は無理。せめて地元の国立に何とか潜り込んで欲しいと思っているわ。それより長谷川本当にどうしたのよ? 長谷川はうちの家庭環境に興味があるの?」
「大ありだ」
「どうして?」
私は香坂にどうしても言わなければならないことがある。
「もし、もし私が市長になったら私を手伝ってくれないか? 私を助けて欲しい」
「無理。絶対に無理」
「無理を承知で言っているんだ。香坂には副市長になって欲しい。頼む」
私は香坂に頭を下げた。
「止めてよ長谷川。私になんかに頭を下げないでよ。長谷川を補佐する適任者は他に何人もいるじゃない。その人たちにあたりなさいよ」
「いないよ」
「とにかく無理よ、ダメダメ」
香坂が席を立った。
「市長から何度か脅された」
私は香坂にそう言った。
「脅された? どういうこと?」
「今、体育館の館長のポストが空いているとね」
「長谷川、いつからあなたは情けない男になったの?」
「今かな……いや、ずっと前から私は情けない男だったかもしれない」
「長谷川には遠山ついているでしょ?」
「関係ない。市政は一企業の思い通りにはならない。たとえこの街が遠山の城下町でもだ。市の仕事は市民のためにある。市民のために全力を尽くす」
「遠山と戦うときが来るかもしれないわよ」
「覚悟している」

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