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千一夜
第43章 第七夜 訪問者 ゴースト
 部屋に入ってきた女は立花京子……ではなく、京子に瓜二つの沢田絵里という女だった。私は沢田が名前を名乗るまで部屋に入ってきた女を京子だと思っていた。
 心臓が止まるくらいの驚きだった。時間が止まったとかそういうのではなく、今風に言うなら突然異世界に入り込んだような感じだった。
「どうかしたのか?」
「……」
 遠山の声は私の耳に届かなかった。
「おい、どうかしたのか?」
「あっ、はい。申し訳ございません」
 ようやく遠山の声が聞こえた。
「幽霊を見るような顔とよく世間では言うが、今の君はそんな顔をしているぞ」
「すみません」
「君は彼女を知っているのか?」
「いえ、学生時代に知り合った人にどことなく感じが似ていたんです」
「付き合っていたとか?」
「いや違います。バイト先に遊びに来ていた小学生の女の子です。その子の面影というか……」
「その子が成長したら彼女と重なると言うわけだな」
「はい」
「ちょっとこっちに来てくれ」
 遠山は沢田に手招きした。
「失礼します。これから選挙終了後までご一緒させていただきます沢田絵里と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
 グレーのスーツとスカートを穿いた沢田が手に提げていた鞄から名刺を出した。
「頂戴いたします」
 私は立ち上がり沢田の名刺を受け取った。私はその名刺に目を落とした。会社名や肩書は書かれていなかった。書いてあるのは沢田絵里という名前、そして住所と携帯の番号だけだった。沢田絵里、一体何者なのだ?
「すみません、今名刺を」
 今私の胸ポケットには名刺入れがない。
「そなことはどうでもいい。座りなさい」
 遠山は面倒くさそうに私にそう言った。
「私の要求はもちろん彼女に伝えてある。圧勝、それが君と彼女の目標だ。わかったな?」
「はい」
「じゃあもういい」
「はい」
 私は立ち上がり遠山に頭を下げた後、沢田と一緒に部屋を出ようとした。
「悪いが、市長を呼んでくれないか?」
「承知しました」
 今、この庁舎には市長を顎で使う権力者がいる。
 私と沢田は市長の部屋を出た。私はどうしても沢田に訊ねたいことがあった。おかしな男だと思われてもいい。私は沢田にこう訊ねた。
「あなたは立花京子さんじゃないですか?」
「ふふふ」
 沢田は意味深に笑った。ジーンズと白いTシャツではないが、沢田から京子と同じ香水の匂いがした。
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