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千一夜
第44章 第七夜 訪問者 夢
 遠山の高校が躍進したもう一つの理由は、遠山機械工業の研究者、技術者のために作られた図書館を土曜日と日曜日に限り高校生たちにも開放したことが挙げられる。
 遠山高獅は研究者や技術者のために、日本では手に入れることが極めて困難で高価な専門書を世界中から集め図書館に置いている。休みであってもそれを目当てに図書館でその書物を読み漁る研究者や技術者は少なくなかった。
 遠山機械工業の研究者や技術者の多くは、高校生たちが目指す大学の卒業生だ。わからないところ、質問などがあれば、教えてくれる人間がすぐ傍にいる。研究者も技術者も未来のエリートらに数学や物理・化学を教えることを拒むものなど一人もいない。そして研究者も技術者も才能あふれる高校生の学ぶ姿勢に刺激を受けた。
 休日の図書館の閉館時間は午後五時であったが、この状況を知った遠山高獅は、閉館時間を午後七時まで延ばした。
 遠山の高校から国立の医学部に合格者を出した年、遠山高獅は大手新聞社の取材をを受けた。取材の最後、記者は遠山高獅にこう質問した。
「卒業された生徒さんたちが将来遠山機械工業を選ばず、どこかの会社に行かれたりしたら寂しくないですか? 例えば全国から先生を呼んだり、アメリカからも先生を呼んでらっしゃいますよね? 何というか、遠山さんは多額の資金をこの高校に投資してらっしゃるわで……つまり……その」
「答える前に君に一つだけ質問していいかな」
 遠山は三十代後半の女性記者をじろりと睨んでそう訊ねた。
「はい、どうぞ」
 意地の悪い質問をした記者は遠山に助けられた。
「学校は誰のためにあるのかな?」
「もちろん生徒さんたちのためにあるものだと思います」
「その通りだ。教育者ではない私でもそのくらいはわかる。私には責任がある。私や私の高校の教師は、私の高校に来てくれた生徒さんたちの将来を豊かなものにしなければいけない。人間は一人一人自由なのだ。たとえ教育者であっても生徒の未来を縛るようなことをしてはいけない。生徒の自由を守ることも私の責任だ。遠山の高校だから遠山に入れと言うのは傲慢以外の何物でもない。私はね、生徒さんの未来が楽しみなんだよ。生徒さんたちの未来のために、できることなら私は何でもする。わかってもらえたかな」
「ありがとうございました」
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