この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第43章 第七夜 訪問者 ゴースト
「君は思ったことが顔に出るタイプなんだな」
「はっ?」
「君はこう思っているだろ。咲子と結婚した場合、自分の姓が変わることになるのではないかと。違うか?」
「はい」
 確かに私は心の中でそう思っていた。
「君に遠山の人間になってもらおうとは思っていない。咲子が君と結婚したら、長谷川咲子になる。咲子もそれを望んでいる。遠山の家も嫌われたものだな。君には一つだけ覚えておいて欲しいことがある」
「はい」
「咲子が君と結婚して長谷川咲子になっても、咲子は遠山の人間だ。目出度く咲子がお腹の中に君の子を宿したとしても、その子は君の子供ではあるが、遠山の人間だ。わかるか?」
「はい」
 咲子と結婚しても、私は遠山の人間になることはできないということだ。もっとも私は遠山の人間になるつもりなんてない。
「君にお願いがある」
「はい、何でしょうか?」
「君と咲子には私の家で暮らして欲しい。高彦も一子も家を出て行った。正直私も家内も咲子がいなくなる寂しい。どうだ、老いぼれの願いをきいてくれないか」
「老いぼれだなんてとんでもないです。ただ……」
「何なら、家賃を払ってもらってもいいぞ。君に家賃が払えればの話だが」
「……」
 遠山は家と言ったが、あれは屋敷だ。街の人間はみな遠山の家を「遠山様のお屋敷」と呼んでいる。
「家賃のことは冗談だ。どうだ? 私と家内と一緒に暮らしてくれないか。頼む」
 遠山機械工業の会長が私に頭を下げた。断ることはできない。
「わかりました」
「そうか、ありがとう。はぁ、早く孫をこの手で抱きたい」
「……」
「そうだ、君に大事なことを言わなければならない」
「大事なこと?」
「選挙が終わるまで今日から君に選挙参謀をつける」
「選挙参謀……ですか?」
「市長選は圧勝しなければならない。市長選となればあの政党が必ず候補者を立てる。私の街なのにな」
「……あの政党」
「憲法を守れ、消費税をなくせ、なんておよそ地方政治には関係ないことを言っている政党だ」
「……」
「あの政党がこの街で持っている基礎票はおよそ五千。そこから半分いただく」
「二千五百?」
「そうだ。それで圧勝だ」
 遠山がまたスマホを手にした。例によって「おい」と一言だけ言った。
 数秒後。
「失礼します」
 女の声だった。ドアが開けられた。
 私は座ったままドアの方に目をやった。心臓が止まるかと思った。
/533ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ