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千一夜
第43章 第七夜 訪問者 ゴースト
「野球は好きか?」
「はっ?」
「君は野球が好きなのか?」
「……はい」
 遠山は何が言いたいのだろうか。
「君は神宮球場でWK戦なんて見たことないよな?」
「すみません」
「勉強とアルバイトで大変だったんだ。それは仕方がない。だが、一度くらい母校の応援をしなさい」
「……ああ、はい」
「秋のWK戦、いや、君の母校からすればKW戦になるな。KW戦に咲子を連れて行くんだ」
「……はい」
「情けない返事なんかするな」
「はい、申し訳ございません」
「○○新聞の記者とカメラマンも神宮に行く」
「あの」
「すべては年末の市長選挙のためだ」
「年末!]
 驚いた。確かに市長からは次の市長選のことは聞いていた。だが、それが年末になるとは聞いていない。
「市長選を少し早めることにした」
 やはり咲子の父は、この街の最高の権力者だ。
「早めると言われましても、市長が」
「市長には遠山機械工業の社外取締役になってもらう。もう話はついている。心配はいらない」
「……」
 だから市長はにんまり笑っていたのだ。おそらく報酬も今よりいいのだろう。
「面倒なことなんかしなくても君はすでに当選確実だ。君も知っての通り、この町は遠山が支えている。遠山が支持している人間は選挙では圧勝しなければいけない。圧勝は義務だ」
「義務?」
「そうだ、義務だ」
「……」
「咲子と君の仲睦まじい姿を市民に見せるんだ。すべてはイメージだ。君が咲子と結婚すれば市民は安心する」
「……」
 かつて遠山機械工業は、主要な研究機関の一部と、主力工場の一分の移転で市を脅したことが何度かある。そしてその火種はまだ燻り続けている。
 私と咲子が一緒になれば、遠山はこの街から出て行かない。仮にそう言う話が出ても市長の嫁は遠山の人間だ。市長は水面下で必ず遠山を説得する。そう市民は考える。
「君は仕事ができる人間だ。頭の回転が速い賢い人間だ。上司から信頼され部下からも好かれている。だが駆け引きができない。というより駆け引きを避ける。政治家は駆け引きが出来なければやっていけない。これから君が覚えるべきは駆け引きだ。いいな」
「はい」
 曖昧な返事はまた遠山の怒りを買う。だから私ははっきりそう返事をした。
「KW戦、確かK大学は3塁側だな」
「はい」
 私でもいリンゴ事件のことは知っている。
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