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千一夜
第43章 第七夜 訪問者 ゴースト
「長谷川です。失礼します」
 市長室のドアをノックして私は部屋に入った。
 応接セットのソファには市長と咲子の父が向かい合って座っていた。ドアを開ける前から何となく咲子の父がいるような気がした。竹内が私の北海道土産を持って庁舎にやってきているのだ。竹内が運転する車の後部座席には咲子の父が乗っているに決まっている。
 私は咲子の父、それから市長の順番で深く頭を下げた。
「ちょっと外してくれないか」
 咲子の父は私ではなく市長にそう言った。
「それではスカイレストランでモーニングコーヒーでも飲んできましょうかな」
 市長はそう言うと膝を一つ叩いてから立ち上がった。市長は私を見るとにんまりと笑った。咲子の父と何を話したのかわからないが、機嫌は悪くないようだ。
「座りなさい」
 咲子の父は今市長が座っていたところを指した。
「失礼します」
 私は咲子の父の正面に座った。
「旅行は楽しかったかな?」
「はい」
「咲子も楽しかったと言っていた。できればもう一回行きたいとも言っていたな」
「はい」 
 今、私の目の前にいる男は、たとえ市長であっても席を外させることのできる男だ。この街で一番の権力者だと言っていい。背中に一筋汗が流れる。
「合格だ。竹内だけでなく早川も君のことを合格だと言っていた」
「……」
 私は咲子の父が言う合格の意味を知っている。
「これからのことを君に言っておく。頭のいい君のことだから一度言えば済むだろう。それから今から私が君に言うことは決定事項だ。君に拒否する権利はない。一番大切なことだったな、君には拒否権はない。いいな、よく覚えておけ」
「……」
 市長でさえこんな高圧的な言い方はしない。咲子の父の命令口調に私は震えあがった。
 汗はやがて額にも流れるだろう。この状況でポケットからハンカチを取り出すのが躊躇われる。
「来月、咲子と君は婚約する。婚約した後で咲子と君は東京のサントリーホールでウイーンフィルのベト7を聴く。会場には○○新聞の記者とカメラマンが行くことになっている。君に演技などできないことはわかっているが、記者とカメラマンの前では少しはサービスしてやれ。それにしてもその服装は何とかならんのか。君の隣には咲子がいるんだぞ。そんな安物のスーツを着られちゃ、咲子が可哀そうだ」
「すみません」
「まぁいい。私が何とかする」
 
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