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濡れた砂漠の村
第1章 その村への旅
肩を優しく包み込まれるように揺さぶられ、私は目を覚ます。

「ごめんね、でも、すごい光景を見せたくてさ、ほら。」

向かいにそそり立つ山肌とそこから下へ広がる峡谷。朝日に照らされて血が通ったように赤く光っている。標高の高い部位は乾燥した空気のせいで一切植物が育たず、赤土の土壌が剥き出しだ。下へ行くほど、少しずつ生命の息吹きが見られるようになり、そして峡谷のあたりは熱帯雨林のような植物相だ。

バスは崖から1メートルもないところで進んでゆく。私は突然恐怖心を覚える。それを感じた隣の乗客は、大丈夫、と言うかのように私の腕を優しく触る。私も彼の腕を柔らかく撫で返す。

「受け入れたとしても、拒否してあがいたとしても、堕ちる時は堕ちるんだ。」

一見、諦めのように聞こえて、実は貪欲な言葉だ。

彼はまた窓の外を指差す。その先にはヤギのような動物の群れがいる。この辺りにしか生存しない特殊なもので、人々の貴重なタンパク源なのだという。そり返ったような太い角と、巨大な睾丸のオス。外にめくり返った形の性器が特徴的な、メス。

私は彼の腕を握ったまま、まどろんでゆく。
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