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シャイニーストッキング
第1章  和哉
 32 夢の始まり ②

 どうしよう、来てしまった…


 


 二人は河川敷の駐車場にクルマを停め、抱き合いながら激しく唇を交わし、舌を吸い、お互いを求め合っていると他の車が駐車場に入ってきた。

 「あっ、和哉くんっ」
 美冴は慌てて和哉から唇を外し、カラダを離した。

 「えっ」
 一瞬和哉はその美冴の動きに驚いたのだが、その車の存在を知って理解した。

 「帰りましょう…」
 そう美冴が慌てて言ってクルマのギアを入れようとする。

 「えっ、嫌です、まだ帰りたくないです」

 「でも、他の車が来ちゃったし…」
 美冴自身の様々な罪悪感から他人の存在を感知することが耐え難かったのだ。
 
「嫌です」
 そう言ってギアに触れている美冴の手を握ってきた。

 「でも…」
 
 「こうしてまた一緒にいられるのに…まだ帰りたくないです」
 
 「………」
 和哉の想いが痛いほど伝わってきていた。
 そして美冴自身も今日の仕事中の様子を見て改めて和哉を好きになり、その想いはまるで10代の中学、高校時代に戻ったかのようだと実感していた。

 「美冴さんの香りが変わり、ストッキングの色艶も変わって、その変わった意味を考えて分かった時にショックでした、このままなかったことにされて終わってしまうんだと絶望しました」
 和哉は激白する。

 「…………」

 「きっと美冴さんも色々考えて、でも多分悩ませちゃって、いや、僕の事を考えてくれてるんだと思って諦めかけて、だから、だから、あのメモを見た時は嬉しくて泣きそうになっちゃって…」

 「…………」

 やはり和哉には伝わった…
 
 「僕が子供だから物足らないだろうけど、美冴さんが好きなんですっ…」
 その慟哭ともいえる激白に美冴の心は震えた。

 「わ、私も和哉くんが好き、本当はまだまだ一緒にいたい…」
 握っている和哉の手から熱い想いが伝わってくる。

 まだ、離れたくない…

 美冴はギアを入れてクルマを走らせ駐車場を後にする。
 河川敷の西の夜空に遠雷が轟き、遙か彼方の山の稜線を浮かび上がらせていた。
 

 

 ああ、どうしよう、来てしまった…

 
 二人はラブホテルの部屋にいた。
 まだ一緒にいるという選択の結果はラブホテルしかなかったのだ。
 
 そしてそれは新たに続く真夏の夜の夢の始まりといえる…


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