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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 41 『カフェバーオアシス』

「ほら、あの頃さぁ、大人になったら、お酒が飲める様になったら来たいね…ってよく話してたの覚えてる?」

「あ…、うん、覚えてる」
 本当に覚えていた、いや、忘れる筈がない。

 あの頃は、喫茶店でコーヒーを飲むという事でさえ大人の世界であったのだ、ましてやバーでお酒なんて、夢のまた夢であったのだ。

「今もあるんだよ」
「えっ、今もあるのか?」
「うん、もうオーナーは息子さんらしいけど、まだあの場所にあるのよ」
 
 あの場所…
 それは当時は中学生が付き合うとか、ましてや喫茶店に通うなんて事は周りでは殆どしていなかった。
 それに私達二人の付き合いは学校中の噂になっていて知らない人がいない程であったのである。
 だからデートは共働きの彼女の家に行くか、そして彼女の導きでこの『オアシス』に通っていたのである。

 なぜなら『オアシス』は街外れの隣街との境界のバイパス沿いに在り、学校から正反対で遠く離れていた、だから二人で自転車の二人乗りをして人目から逃れる様に通っていたのだ。
 ただ私達は二歳差があり、お互いに中学生、高校生、大学生とズレがある時期があったのと、お互い部活動をしていながらの交際であった。二年間交際して一度別れ、また復活して二年間の足掛け四年間の交際であるが、その間には何度となくその『オアシス』に通ったのであった。

 私はこの地元を離れ、東京の大学に上京して22年が経っていた…

 そして大学に入学してからは当時流行っていたサーフィンやスキーに夢中になっていて、長期の休みも殆ど帰省しなかったのだ。
 そしてたまに帰省しても2、3日ですぐに東京に戻ってしまう程に、東京の刺激を享受していたから、いくら地元とはいえ実家の周りの事以外はあまり分からなかったし、興味もなかったのである。
 だから実家から少し離れた場所など分かりようもなかったし、ここ20年、この地元の街は都市化計画により激変していたのだ。

「へぇ、まだあるんだ…」

「うん、まだあるのよ…」
 そう言うと彼女は目を輝かせて言った。

「ねぇ、今から行こうよ」
「えっ、今から」
「うん…」
 
 だってわたしたち大人じゃん…
 と、悪戯っ子の様な笑みを浮かべてそう言ったのだ。

 私はすっかりあの頃に…

 青春が蘇ったかの様な心持ちに…なっていた。




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