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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 24 律子との電話(2)

 内心では律子にも魅了されている自分を自覚しており、そしてもしも誘われたならば断る自信が全くなかったのだ。
 そして
 『どちらを選ぶのか?』
 と、仮に迫られても、果たしてはっきりと答えを出せる自信がなかった。

 だがゆかりとの付き合いは二年を超えているし、本当に愛していると自覚をしている、公私共々に居なくてはならない絶対的な存在であるという事は痛いほどに分かっている、だが、なぜか律子という存在を無くす、消す事が出来ないのも事実なのである。

 そのくらいに律子の存在感が私の脳裏の片隅に、しっかりと住み着いてしまっているのだ…

 だからこうして律子に誘われてしまうと、はっきりとは断れずに
『何とかしよう…』
 と、色々と画策してしまう自分が居る。
 それにこの感覚は初めての想いの感覚であるのだが、そんな不惑さにはあまり違和感を感じないのである。
 そしてまた律子と逢っている時は、本当に心から彼女の魅惑に魅了されていることが心地良い、いや、心地酔いのだ。

 そう、更に酔い痴れてしまう…

『じゃあ急いで帰らないとですね』
 そしてこの声音、響きなのである、なぜか彼女の声が私の心を異常な位に揺るがせ、震わせてくるのであった。

 更に心を酔わせてくる…

「ああそうなんだよ…」
『では、また、電話しても…』
「ああもちろんだ、決して危篤とかの重症ではないから、いつでも電話してくれよ…」
 と、自分からそう言ってしまう。

『はい、嬉しい、あ、ごめんなさい…』
「あ、いや、うん…」

 ああ、これは、昔、中学生時代の…

 恋した彼女と話している、いた、感覚と同じ感覚だ…

 少し前に、律子の何に魅かれているのかと逡巡した時に想い浮かんだのだが、やはりそうなのである。

 あの頃の切ない想いと同じ感覚なんだ…

『じゃ、お大事に…』
「ああ、すまない、ありがとう…」
 私はそう言い、心を激しく揺らぎながら電話を切った。

「ふうぅ…」
 そして溜息を漏らしながら、後部座席に目を閉じて沈み込む。
 すると、目蓋の裏に律子の顔が浮かんできた。

 やはり、律子は私のこの先の、アキレス腱になるかもしれないな…

 だが…

 私からは律子を切る事は決して出来ないのであろう…

 そう、そんなヒリヒリとした想いが湧いてきてきていた。




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