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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 23 律子との電話(1)

『あの…今夜のご予定は?』

 なんとなくなのだが、この律子の、おそるおそる訊いてくるこの感じ、ニュアンスがなぜか私の心を刺激して、揺らしてくるのだ。
 ゆかりの訊き方とはまた違った魅力を私の心が感じてしまい、魅了されてしまう様なのである。

 既に私は、僅かなこんな会話なのに、すっかりと律子に魅かれてしまっていたのだ。
 そして昨夜からさっきまで私の心を占領していたゆかりの存在感は、小さく隅に追い遣られてしまっていた。

「ああ、実はさ…」
 ……と、さっきハイヤーに乗ってからの弟との電話でのやり取りを正直に伝えたのだ。

『あら、まあ、それは大変、じゃあ急いで帰らないと…』
 律子は驚いた声でそう言った。

「そうなんだよ、本当ならば…あ…」
 と、私はそう言って、慌てて言葉を止めたのだ、なぜならば、それは律子にではなくてゆかりに対して思っていた事を、つい、口から出そうになってしまったからである。

 それは本当に無意識であったのだ…


『えっ、そ、そうなんですか?』
 しかし律子は理知的な女性である、私が止めた言葉を素早く読み取り、嬉しそうな声のトーンで反応した。

 それは…
 帰省する前に一緒に過ごそう…
 正に、昨夜ゆかりに伝えた言葉を、迂闊にも口から漏れそうになり、慌てて呑み込んだのである。

 や、やばかった…

 だが、律子は先読みをし、解釈して喜び、テンションを上げたのだ。

『ごめんなさい、わたしったらお母さまが倒れてしまったのに、不謹慎にも喜んでしまいました…』
 と、そう言ってきた。
 だが、それを言葉には出さなかった訳で、正に間一髪であったのだが
 まるで、これじゃ、詐欺師の常套句じゃないか…
 と、一気に卑下する想いが昂ぶってしまう。

 実は、昨夜あれ程ゆかりに対して想いが昂ぶった筈なのだが、内心は律子からもこうした電話での誘いが遅かれ早かれある筈だ…と、思っていたのだ、いや、期待かもしれなかった。
 そして帰省する迄の三日間の夜をゆかりと律子で分けなくてはならないかも…と、考え、思っていたのであった。
 そのくらいに内心では律子にも魅了されている自分を自覚しており、そしてもしも誘われたならば断る自信が全くなかったのである。

 本当に、ゆかり、律子、この二人に対しては魅了されてしまっていた…




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