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シャイニーストッキング
第13章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一
 22 着信表示

「とりあえず今日、今から帰るよ…」
 私はそう弟に云い、電話を切った。

 ゆかり…

 すると急にゆかりの顔が浮かび上がってきた。

 残念だが、あと5日は逢えないな…

 元々の予定では12日の夜から15日の日中まで実家に居るつもりであったのだ、だが、今夜、今から帰るからあと5日は逢えないという事になる。

 昨夜の電話でのお互いの気持ちの昂ぶりを思い出すと残念な想いが湧いてくるのだが、事情が事情であるから仕方がない事といえる。

 ま、ゆかりも理解してくれるだろう…

 そう残念な想いを感じながら、ゆかりに電話をしようと携帯電話を開く、と、突然、着信した。

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 あっ…

 着信画面表示には松下律子の文字が表示されている。

 律子からだ…

 一瞬であの、この前の横浜での夜が浮かび上がってきた。

 律子…

 そしてこの電話は、山崎専務から銀座クラブ『ヘーラー』のママを通しての、帰途の情報でも入ったのであろう、彼女の名前を見た瞬間から、なぜか昂ぶりを感じてしまう。

「もしもし…」

『あ、わたしです、律子です…』
 この律子の声の響きに、このトーンに、なぜか私の心はいつも昂ぶりを感じてしまうのであった。

『今、帰りと聞いたので、つい、電話しちゃいました』
 やはり山崎専務情報である。

「うん、そうか」
 私は胸の昂ぶりを隠そうと声音を落として返事を返す。

『電話、大丈夫です…か?』
 私が一人でハイヤーに乗っているのを知っているのに、それをまた律子は気遣ってくる。

「あ、うん、大丈夫だよ」
 私はアッという間に、そんな律子の魅力に、声に魅了されてしまうのだ。
 なぜか、この声に心が惹かれて、魅かれてしまうのである。

『今夜は?』
 すると早速律子は訊いてくる。
 彼女もまた、私の休みを狙っているのだ。
 そして務めている銀座のクラブもお盆休みに入った筈なのである。
 心が一気にゆかりから律子へと揺れ動くのを自覚した。
 私はなぜか、どうしても、律子には心が激しく揺れ動いてしまうのである。

 この心の揺れを自覚した一瞬、なぜかこの先、更に律子の存在が私のアキレス腱になる様な気がしたのだ…




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