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Memory of Night 2
第50章 episode of 0
秋広は事務所の奥にある冷蔵庫を開け、カレーやシチューなどのレトルトや、スープ類、レンジで温められるようなパックのご飯などを両手に抱えて事務所のテーブルの上にどさりと置いた。
「……は?」
「いや、僕ここで一日過ごすことが多いんですけど、昼買いに出るの面倒で、まとめて食べ物置いてるんです。ま、いつもは弁当なんですけどね」
照れくさくなり頭を撫でる。自分で弁当手作りしてくる男も珍しいだろうか。現場に出ていた頃は、よく驚かれた。周りは当たり前に、実家暮らしか奥さん持ちだと思っていたようだ。
「へー、奥さん、マメだね」
「あ、いや、自分で作ってます。独身なんで」
桃華がわずかに灰色の瞳を見開く。綺麗な左右対照の二重だった。自分の目より、二倍以上大きいのでは、などと、今の話題と全く関係ないことをつい考えてしまった。
「……へー」
なんとも興味なさげな相づちのあと、桃華はスープとご飯のみを右手に持った。
「じゃあこれもらう」
「他はいいんですか?」
カレーとシチューはパッケージの裏を確認した。
「湯煎しなきゃなんだろ? あたしんち、ガス無いから」
「…………え?」
「じゃ、ありがとうございます」
桃華は会釈と共に礼だけを残し、事務所を出ていった。

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