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Memory of Night 2
第50章 episode of 0

 秋広は嘘をついた。殴られた頬も蹴られた腹も、吹っ飛ばされた時に擦りむいた両腕もそれなりに痛かったが、そもそも自分が悪いのだ。

「桃華さんは、自分の身を守っただけなので、これっぽっちも悪くないです。だから謝らないでください。僕の方こそ、驚かせてしまい申し訳なかったです。あと……」

 秋広はそこで押し黙る。桃華の裸を見てしまったことに触れるか触れないか、迷った。

「あと?」

 おうむ返しに聞き返され、秋広はついあたふたとなる。

「あの、あ、そういえば体調は大丈夫なんですか? 今日から仕事復帰したようですが」
「ただの貧血と、風邪気味だっただけだ。別に昨日も大丈夫だったけど、無理矢理帰された」

 桃華の瞳は不機嫌そうに細められた。

「……風邪も無理をすると悪化しますし、疲れも溜まる頃だと思いますし、休める時は休んだ方がいいですよ」

 桃華はじっと秋広を見ている。視線は外さなかったが、表情も変わらなかった。

(ウザイとか思われてるのかな)

 思ってそう、と桃華の視線から顔を背けながら思った。

「あ、桃華さんて一人暮らしですよね?」
「……そうだけど?」

 だから何? と言わんばかりの顔で桃華は頷いた。

「良かったら、これ……」
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