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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

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 僕のどうしようもない想いの塊を、木織はどう聞き届けていたものか。それを想像するのは、少し――否、とても怖かった。


「……」


 いつもの如く、怜悧で物静かな表情で、物音も立てずに僕の髪を撫でる感触だけが、意外な程に優しく感じられていた。その微かなものに支えられ、僕は取り留めもない告白を始めてゆく。


 セックスが怖かった。あの夜、無理やりさせられたこと。その一つ一つの淫らな行為を憎んだ。女の人が心底、怖いのだと感じた。

 そのクセして勃起してしまった自分自身のことは、何なんだよ、と思った。動物以下だと断じた。醜い生き物だと、自覚するより他はなかった。

 それからは、女の人の裸に興奮する自分のことが只々、嫌だった。それでも時折、信じられないくらい興奮している自分を恐怖した。葛藤する理性をあざ笑う様な、性欲のバケモノが僕の中に棲んでいるような気がしていた。

 全部、見ないふりをした。誰でもいいから、好きになろうとした。好きという気持ちと、性的な興奮とを、同じベクトルに乗せたいのだと、おぼろげながら望んでいた。

 そうして一度、何の気なしにセックスをして、それで全てがリセットされるのだと――そう本気で信じていた。

 けれども――結果、僕の身体は拒否反応を起こして。何年もの間、誤魔化し続けていたもの、その全てが無に帰した。

 性的な興奮の突き当りは激しい嫌悪の嵐で、こんな僕が誰かを好きになれる筈なんかないんだと――そう思い知っていたのだ。

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