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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

 それから僕は病院に行くと、心的外傷という未だ耳慣れないなにかを、治療したのだということ。

 こんな風に他人事みたいに言うのは、治療やカウンセリングしてくれた先生たちに申し訳ないけれど、僕がその期間に学んでいたことは、ひたすら逃避することだったように思う。みんなとても優しく接してくれて、口々に「ゆっくりね」とか「焦らずに」とかその様に声をかけてくれたのは、割とよく憶えている。

 総じて僕は、その時の経験を恥じて、ゼロにしたいのだと思った。それは誰に倣ったのではなく、僕が自然と得ていた一つの答えだけど――それが正しかったのか否か、その審判は後になって突きつけられることに……。

 母さんは離婚している。こんなことになったから、当然といえばそうなのだろうけど。僕が家を留守にしていた間に、一時的に父親であった人とは再び顔を合わせることもなく――静かに家を後にしていった。

 義姉の方は、何らかの更生施設に入ったらしい――と、それは誰かを相手に電話口で話していた、母さんの言葉から何となく知り得たことであり。そのことについて、僕がそれ以上、詳らかに知ろうとする筈もないのだ。


 そうして――自分の中の傷の大きさと形を、僕が再認識したのが――あの夜。


 胃から全てを吐き出し、転がりはいつくばり――木織に辿り着いて、その胸で僕は泣き、全ての想いを吐露していたのだった。


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