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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

そうして、夜中――。
「……」
僕は闇夜に一人、呆然として佇んでいた。けれど、その周囲は静かとは言い難く。
「四人――これで、全部か?」
「はい――ですが、部屋にこんなものが」
「――! チッ、ドラッグか……」
血だらけになった義姉とその友人たちは、救急車へ運ばれていった。
その結果が暴力を有する――すなわち事件性を孕んでいることは一目瞭然であり。その為、救急隊員に遅れ、警察も駆けつけて来ていた。
「――?」
裸だった身体の肩に、誰かが薄手の毛布がかけてくれる。
僕は振り向き、その人物の顔を見上げた。
「君――怪我は?」
「……ない、です」
ギュッと握ったままの拳を顔の前で眺めたけど、そこに付着した血は自分のものではなかった。
「そうか……」
僕のお父さんくらいの歳の刑事さんは、そう言ってため息を吐く。
そして、それから――
「お母さんには連絡したから、もうすぐ帰ってくるだろう。それまで――オジサンに話を聞かせてもらえるかい?」
「はい……」
僕はそう返事をして、ほんの気なしに向いの家の二階を見上げていた。
その時――
「――!」
狭く開いたカーテンの隙間に、僕は木織の姿を見つけている。
この夜の惨劇に、いち早く気づいていたのは――木織だったのかも、しれないと思っていた。

