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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

僅かでも一度、眠りに落ちていたものか。それすらも、定かではなかった。
「……」
ふと不思議な感覚があり、徐に上体を起こす。電気を点けたままだったから、目を細くして部屋の中をきょろきょろと見渡す。
その時、机の上の時計が午前零時四十九分だったことは――その後になっても何故か、よく憶えていた。
「ん……?」
ふと、名前を呼ばれた気がする。
家中は思いの外、静かで――
だから、空耳かとも思ったのだ――けれど、
くすくす――と、微かな笑い声みたいなのが聴こえて。
そしたら――
「ねえ――起きてるんでしょ?」
「えっ……?」
小さくても、今度ははっきりと響いていた、その声は――
「いいから――おいで」
どうやら階段の上から、僕のことを呼んでいるみたい――だった。

