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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

彼女の目が映していたものは、四つも年下の退屈そうなガキ。すなわち、それが僕であり、義弟(おとうと)という便宜上の役割に何一つ興味を抱くことはなかったようだ。
そんな態度を取られてしまえば、元来臆病な僕がそれ以上、彼女に接することを快しとできる筈もなく。というか、単にその存在が怖くて近寄りがたいのだった。
階段を上がった二階、その廊下の突き当りにある一室。中学にあがったら僕が自室として使う約束だったその部屋は、いつの間にか彼女の塒(ねぐら)と化している。
それを抗うこともなく取られた格好の僕は、一階の玄関近く、リビングの隣りに在る小さな和室に収まっていた。三畳(プラスα)ほどのスペースは、ベッドと勉強机を置いただけでかなりの部分が埋まる。そんなことに不平を覚えながらも、中学生の僕は多くの時間をその和室の中で過ごすこととなっていた。
殊に大人たちが留守であり、尚且つ、この家に彼女が居る――そんな時は、そうであり。そして、介護の仕事をする母さんが夜勤で帰らない、あの金曜日の夜も――そうだった。
「……」
僕はイヤホンで音楽を聴きながらも、時折――
「――!?」
ビクリと肩を窄めては、二階の騒ぎを気にしている。
どうやら、その夜の客は――彼女の女友達である、ようだ。

