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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

だから、僕はまた記憶を辿る。
最早、それを直視するより他になかった。
それは、僕が十三歳になったばかりの頃の光景――。
僕の家の近く路地には、パトカーだったか救急車だったか、或いはその両方だったかのパトランプがちかちかと喧しく周囲の闇を照らして止まない。
「……」
家から出た僕は呆然としていて、少し肌寒かったことを憶えている。それもその筈で、その時の僕は、一糸を纏わぬ姿だ。華奢でみじめたらしい裸の至る所には、真っ赤な血の跡。しかしそれは、僕が流したものではなかった。
頻りに忙しく家と外を出入りしていた誰かが見兼ね、薄い毛布を体に被せてくれた。そんな時、ふと見上げていたのは――
「……!」
隣の家の、二階の部屋。その窓に立つ幼なじみと、視線が重なっている。
そう――木織は、あの時の僕の姿を見ていた。たぶん――何があったかも、おおよそ聞き及んでいる筈だ。
だからこそ、僕は木織を避けるようになり。木織も僕と、距離を置いて――?
だけど――それならば、どうして? いや、考えたってわからない……きっと。
それを知る為、やはり――順を追って、あの時のことを改めてもう一度、振り返らなければならないみたいだ。

