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エブリデイ
第5章 それは歪であるが故、何物にも代えがたく

 その時の僕は心の底からほっとしていたのは間違いがないのに――しかし、それでいて自らを激しく卑下せずにはいられなかった。

 木織は細い身体でしっかりと僕を支え、小さなふくらみの胸が項垂れた頭を包んでくれる。汚れた僕の服で、木織のことまで汚してゆく。

 ホント――もの凄く心地よくて、その際の感覚――それを覚えた自分自身が、どうしようもないくらい気色悪い存在なのだと思った。

 それだから僕は、形にならない言葉を、木織に伝えようとして――嗚咽しながらも、それは、必死に――。



「あ……あのっ、ヒトがっ、いけないんだァ……僕に、あんな酷い、こと……をっ」


「そうみたい……でも。彼女はもう、いないのでしょ?」


「いなくゥ、ならない……僕の、中にはァ……いつでもいて……僕がっ、男でっ、あろうとすれば……か、必ず…………今日、それを、思い知った」


 そうだ……。僕は男としての当たり前の欲――それを異性に向けることに対して、強い拒絶反応を起こしてしまうのだ。

 性的な興奮やその時の身体の反応は、人とは比べられないけれど、たぶん正常だったように思う。少なくとも、まだ恋愛に至る以前。僕はあの想いを、素知らぬものとして忘却しようとしていた。

 だけども、やはり不安は拭い去れず。自分でも、それは気づいていた筈。なのに僕はこの夜、愚かしくも自らにその現実を突き付けてしまった。


 もう心の傷に――嘘をつけそうに、なかった。


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