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スローバラードを君に
第6章 蜜月
その頃、ベンジャミンの事務所でジャム店長は頭を抱えていた。
机の上には山の様な帳簿が積み重なっている。
電卓を丸い指で弾いては、表示される数字を見て溜め息を付く。
壁のカレンダーを見て悲嘆に暮れて「ああ……」と言葉にならない声を上げてしまう。
ジャム店長が見ているのは、junkのライヴが行われる予定の日だった。
「参ったなあ……」
思わず言葉が口をついて出た時、事務所のドアが静かに開いた。
「いらっしゃいま……」
ジャムは口をあんぐりと開ける。
訪れた人物は、シュガースパイスのヒロヤだった。
スーツの付き人を伴い、黒いレザージャケットを着こなしているヒロヤは以前にも増して垢抜けてハンサムに見えた。
「ヒロヤ君……
久し振りだね?どうしたの?忙しいだろうに」
笑顔で迎えるジャムに、ヒロヤも華やかな笑みで会釈をする。
「……お店、経営が大変らしいですね」
「……どこでそれを」
「ベンジャミンは知る人ぞ知る、有名なライヴハウスですから、噂は業界に居ても入ってきますよ……
それで、今日は俺から提案があります……
店長さんにとって、悪い話ではないと思いますよ?」
ヒロヤの色素の薄い瞳の中に、底知れない光がぎらついていた。

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