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水蜜桃の願い
第5章 甘やかな願い

「……透子ちゃんに振り回されるのは悪い気はしないってだけ、言っておくよ」
え? と不思議そうに聞き返す彼女の
「……振り回されてるの私の方だと思うけど……」
少し不満そうな呟きに、また、口元が緩んだ。
俺を見つめながら恥じらうような表情を見せる彼女に、こんな顔を見るのはいつぶりだろうと思った。
そして、やっぱり俺はどうしようもなくこの子が好きなのだと、そうあらためて気づかされながらも、だからこそこの雰囲気に流されちゃだめだ、と冷静な自分を少しだけ取り戻す。
考えよう──ちゃんと。
そう決め、気持ちを切り替えた。
じゃあ、と仕事に戻るために身なりを整え始めた俺を彼女は黙って見ていたが、不意に、あ……とその唇を開く。
「……先生」
近付き、伸ばされてきた指先。
口紅ついてたら大変、と俺の唇を拭う。
それだけのことなのに、なぜか息を深く吐くその姿が妙に艶っぽい。
「……人の口さわって何考えてんの?」
そんな言葉でからかうと、慌てたように、別に何でも……と答えたその形のいい唇。
誘われるように俺もまた、そこに指先を伸ばしていた。
親指でそっとラインをなぞっただけなのに、あ……と彼女が甘く喘ぐから、そそられ、中にまで入れたくなる。
「ん……や……」
煽られそうな自分を必死で抑え、指を離す。
無意識に、深く息を吐いていた。

