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水蜜桃の願い
第5章  甘やかな願い


「……夜まで待てる?」


それはある意味自分への言葉でもある。
頷いた彼女の瞳は、とろりと熱を帯びていた。
完全に欲情しているその目。


「待てないからってひとりでしたら駄目だよ」


俺だって我慢するんだから──と冗談で発した言葉に、っ……と一瞬言葉を詰まらせながらも必死で振ってくる首。


「そんな、の……しない……」


紡ぎ出す言葉は甘く掠れ。
そんなふうに否定する姿もやはりどこか扇情的に思えて、俺もかなり重症だな、と苦笑いをしながら自分を抑えるように身支度を再度確認して鞄を持つ。
じゃあ、と玄関に向かう俺の後を慌てたように彼女はついてきた。

靴を履き、振り返って


「じゃ、後で」


もう一度かけた声に、うん……と答えながらもどこか心配そうな表情を見せる。
俺がそう感じただけかもしれない。
今までのことに対する罪悪感に似た感情が、そう思わせただけなのかもしれない。


「ちゃんと連絡するから」


俺を見つめる彼女に


「嘘じゃない。本当に、連絡する」


繰り返し告げる。
ほっとしたようにようやく頷いた彼女の姿に俺もまた安心し、彼女の家を後にした。



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