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第39章 騎士の仕掛けた罠

｢綾波を誘惑できそうかい？｣

　残酷な言葉が聖恵の胸の中を深く抉る。聖恵に逆らう選択肢はない。
　聖恵の恋情はもはや違う歪んだ方向へと向かって行きつつあった。

｢はい……様子を見ながら……仕掛けてみます……｣

　翔大は優しく笑うが、その瞳の中は冷たかった。

｢聖恵は魅力的だからね……男なら、迫られたら堕ちるさ……｣

　翔大は、聖恵の瞼や頬や鼻筋や唇を指でゆっくりと確かめる様に触れて溜め息を付く。

(そっくりとまではいかないが、美名に似ている……
　美名を……この聖恵の様に俺の意のままにするには……
　美名を動揺させて、そこに入り込む……
　汚いやり方だろうが何だろうが構わない。
　美名をこの腕の中に取り戻せるなら何でもやる……)