この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
sunset~君の光になりたい
第26章 醒めない夢
「は――っ……は――っ……」
里沙は息を乱し、楽屋のドアの向こうを睨む。
(――そう、これは夢。甘い夢なんか、この世の中にあるわけがない。
幸せな夢があるなら――
何故あんなおぞましい事が千波に起こるの?)
不意に、幼い頃の記憶が蘇り体を震わせた。
一瞬、何処を見ていたのだろう。
体がふわりと軽くなり、頬に冷たい何かが当たった。
目の前には、濡れた髪のままで見つめる二つの黒い瞳がある。
いつの間にか、里沙の身体は逞しい腕で抱き上げられていた。
悲鳴をあげそうになるが声が出ず、里沙はそのまま意識を失ってしまう。
「タケヒコ?大丈夫か……?し、刺客は相当強いんやろ?」
楽屋から顔を半分だけ覗かせたベースの信生(のぶお)が怯えている。
タケヒコは、気を失った里沙の顔をじっと見つめると、ふっと笑った。
「何言うてんねん。ただの可愛い女の子やんか」
――タケヒコに抱かれているような気がする。
これは夢なの?
もし夢ならもう、醒めなくてもいいーー
夢うつつの中、里沙はそう願っていた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


