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sunset~君の光になりたい
第19章 鏡の国で捕まえて

「もうっ……なんで……」

 里沙は溢れる涙を両手で拭う。
 今まで、武彦を三回以上は投げ飛ばしただろうか。
 暴力行為で訴えられても文句は言えないのに、彼は一切咎めたりしない。
 まさか奴は、密かに復讐計画を立てているのだろうか。
 暴力行為をタテに、店を脅して賠償金をぶん捕るつもりだとか?

「ああ……ゴメンなさい母さん……私は……なんて親不孝な……ひっ……
 ちょっと言い寄られて……いい気になったのが間違い……
 やっぱり私には……水戸黄門さましかいないんだわ……ひっ……ええええん」

 本格的に泣き出した瞬間、目の前の扉が開いた。
 武彦が駆け寄ってきて凄い力で抱き締められる。

「……水戸黄門もええけどthunder武彦も、捨てたもんやないで?」

 耳元で囁かれ、一瞬身震いしてしまった。

「寒いん?」

 武彦が上着をかけてくれる。

「さあて、里沙さんを鏡の迷路で見つけたで?」

 彼はニッコリ笑い、里沙の涙を大きな指でそっと拭った。

「うう……みづがっぢっだ」

 里沙はひくひくしながら言った。

「何?見つけて欲しくなかったん?」

 ブンブンと首を振りながら、涙がまた溢れてくる。
 武彦は、くすくす笑いながら里沙の左手をそっと掴み、ポケットからピンクのビーズの指輪を出して薬指に嵌めた。

「……うんやっぱり、ピンクが似合う」

 指輪を嵌めた里沙の左手の薬指を見て、満足げな笑みを浮かべる。 
 里沙は、何も言えず彼をただ見詰めた。彼は一瞬ふいと目を逸らし苦しげに呟く。

「男の前で……あんまり、泣いたりしたら危ないって……知らんの?
 俺も毎回我慢は……無理やで」

 武彦は、里沙の頬を両手で挟みキスした。
 一度唇を離し、里沙が何か言いかける前に鏡の壁に押し付けて、もう一度唇を重ねた。
 壁の冷たい感触とは対照的に、彼が触れる指や唇は燃えるように熱い。
 里沙の頬も身体も、熱くなっていく。

「里沙……」

 初めて呼び捨てにされた。
 
 ――私も武彦と呼んだほうがよいのだろうか、と一瞬頭の中で考えた時、また唇を塞がれ、何も考えられなくなってしまった。
 大きな背中を抱き締めながら、里沙はいつしか
「好き」
 と、呟いていた。

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