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父と娘の近親相姦日記 第2部 暴走編
第27章 群がる蟻たち
 灯りの乏しい車のなかでは、顔の細かいディテールは良く掴めない。
 しかしそれでも、その男がそれなりのハンサムであるということはすぐに分かった。
 美少年、というのともまたちょっと違う、少々エキゾチックな顔立ちである。

 「じゃあ、出発よ。高梨、お願い。」

 千鶴がそう言うと運転手の男は、かしこまりました、と言って扉を閉め、そして車を出した。

 
 動き始めた車の中で、3人の会話は弾まない。

 薄暗い閉空間、しかも初対面の人間しかいない環境でそれなりに馴染める処世術を、柚子の年で持ち合わせているものはそうはいないだろう。

 もっとも、柚子の神経がもう少し幼ければ、逆にその空気にあっさりとなじんでいったのかもしれない。姉が「ATフィールド」と称した思春期特有の壁のようなものは、同年代の男子を準備したところで簡単に削ぎ落とせるようなものではなく、むしろ柚子の緊張感を増すだけである。

 さらに言うならば、この男がいるが故に、本来の「目的」に関する会話もできなくなってしまってもいるのだ。

 「うちはね、自分で言うのもなんだけれども、かなり広い敷地の中に立っているの。」


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