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目が覚めたら。
第10章 変態王子様のご褒美
 



 ◇◇◇



 ハル兄が本命の用件で入れたというモモちゃんのメールを見に、あたし達はゲームを終えて人が散ったアトリウムに戻り、そこから更衣室に向かった。

 あれだけ沢山の人でごった返していた更衣室前の通路は、今は閑散としていて、ノーパンをなんとかしようと切羽詰まったあの時を思えば、拍子抜けしてしまうほどに平和だ。


「俺は男子更衣室へ行くが、あんたの傍を少し離れることになる。その間にどんな事態が起こるかわからない。特にあのナツもどきが館内にまだいるのかどうかわからないから、ひとまずあんたは女子更衣室に居てくれ。終わったらドアをノックする。同性の中に混じっていた方が安全だ」

「アダルトナツは、そこまであたしのストーカーしない気が……」

「それは希望的観測なだけだ。いいか、僅かな時間でもあんたはあの男にぐらぐら揺れる。念には念を入れないと」

「心配性だなあ」

「あんたがあの男に、警戒心を持たなすぎなんだよ。俺の苦労気づかず、マイペース過ぎるから……」


 ぶちぶちと小姑のような独り言が始まる。モモちゃんは気苦労な若年寄だと思ったが、そこは心の中での言葉にして、とりあえずはモモちゃんに従い、あたしは女子更衣室に入った。

 更衣室は横にスライド式のドアとなっている。開けると休憩室を兼ねたような空間が広がり、無料のドリンク飲み放題だけではなく、無料のマッサージチェアが横一列に並んでいる。


 モモちゃんは直ぐ戻るとはいえど、ふたりのおばさんが、椅子に寝そべりぶるぶるとお腹を震わされながら上げる歓喜の声に、次第にあたしも興味津々となってくる。

 あたしはマッサージチェアというものを体験したことがない。こういうのはおばさんにならないとしては駄目だというおかしな先入観があったんだ。


「これは、き、効く……っ」


 どこに、どんな風に?


「ああ、力が漲(みなぎ)る。若返りそう……」


 そこまでのもの!?


 12年後、アラサーの身体で利用するのなら誰も文句は言うまい。


 ドア付近にある列の端の椅子は空いている。


 さあ、シズル。

 未知なる世界へ、Let's Go!!
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