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~散花~
第29章  入内

南殿。

そこは紅梅宮の一等地。

築垣を巡らした百坪ほどの敷地に、小ぶりとはいえ居殿・湯殿・膳房を配し、しかも三層からなる楼閣まである。

「見晴らしがいいでしょう?」

楼の最上階で、芙蓉は自慢げに玉蘭を招き寄せた。

「ぅ…わぁ…」

玉蘭が言葉を失う。

事実、勾欄からの眺めは格別だった。

紅梅宮の全体像がよくわかる。

全長55間はあろう切妻造りの身舎が四棟。一棟あたり50室の“御寮”が一列に並んでいる。そこに住まう同輩たちを、文字通り見下ろせるのだ。

優越感――



(けれど…)



玉蘭には、まだ居心地の悪さしかなかった。




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