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姉枕
第1章 東京……十八歳
 僕は姉さんの思惑通り、思わず叫んでしまった。まさしくテレビで見たことのある建造物が、そこに堂々とそびえていた。
「知ってる! 国会議事堂や」
 僕はクイズに答えるように、勢いよく叫んだ。
「そう。大きいやろ。私も初めて見たとき、めっちゃ感動したんや。たまたま仕事の帰りに、上司とタクシーに乗っていたときに見たんやけど」
 姉さんが顔をぬぅと近づけて、僕と同じ視線で眺めてくる。
「そうなんや。すげえ~デカ! 実物はこんなにデカいんや?」
「ふふ。良かった」
 姉さんのかぐわしい息を感じながら、僕は国会議事堂の壮大さに息を飲んでいた。
「これを見せたかったんや?」
「そうや。じゃあ、運転手さん、このままお台場までお願いします」
「え? もう終わり?」
「うん。車から見るのが一番ええねん。いきなりドーンと目の前に現われるから」
「そうなんや~」
 国会議事堂を見ただけだというのに、僕は先ほどまでの都会に来たという緊張感が若干、和らいでいた。興奮したのが良かったのかもしれない。姉さんも僕が少しリラックスしたことをわかったのか、
「そういや、はる。仕事のほうは、どうや?」
 急に日常的な話を振ってきた。
「え? あ~、まあ、ちゃんとやってるで。親方に叱られてばっかりやけど。でも、最近は柵を作らせてもらえるようになったで。角材をのこぎりで切るだけやけど」
「へえ、すごいやん。あんた、昔から手先だけは器用やったもんなぁ。あれはやってるの? 剪定だっけ」
「剪定なんか、まだまだやらせてもらえへんで。基本は掃除や。朝から晩まで掃除。植木職人はまず三年間は掃除なんやって。親方に言われているねん」
「石の上にも三年って言ってたもんね。でも、そろそろ三年になるやろ。なんやかんやいって、ちゃんと続けられているから、偉いよ」
「まあな」
 姉さんに褒めてもらえると、僕はやっぱりまんざらでもない。
「半被(はっぴ)はもらえた?」
 一人前になったら、植木屋の家紋入り半被が着られるということを、姉さんは覚えていたようだ。
「まだねんけど。親方がこの前、そろそろ春吉にも半被を作ってやるか、って言ってたよ。まあ、お酒を飲みながらだったから、ほんまかどうかわからん」
「そっかぁ! はるの半被姿、早く見たいわ」
「ああ……姉さんのほうこそ、どうなん? 仕事は」
「うん。楽しくやっているで」
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