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姉枕
第1章 東京……十八歳
「お台場、知らない? 今年の七月にジョイポリスっていう遊ぶ場所も出来て、めっちゃお洒落なスポットになっているねん。ほら、レインボーブリッジとか聞いたことない?」
「あ~、聞いたことあるわ。ベイブリッジやろ」
「それは横浜やわ」
よほど面白かったのか。姉さんがずっこけるように僕に体を寄せて、胸板をポンと叩いてきた。姉さんの桃のような香りが、体温とあいまって、一段と甘ったるく感じた。
「あ、そうなんや……どうせ、俺は田舎もんやから」
僕は姉さんにくっつかれたことにドギマギしつつも、ちょっと拗ねてみせた。
「ごめんごめん。うちも田舎もんやった」
姉さんはすぐに謝り、僕から体を離した。
僕は別に本気で拗ねたわけでもない。むしろ、嬉しかった。同じ田舎者の姉さんが今では東京の人になって、ちゃんとこの街に溶け込んでいると思えたからだ。
一年前、姉さんが東京に行くとなったとき、僕は田舎者の姉さんが都会でバカにされないか、けっこう心配していたのだ。
慣れない都会の生活で、ひとり悔しい思いをしていたら、可哀想じゃないか。
それなのに姉さんは偉そうに都会人ぶって、田舎者の僕を冷やかしてくる。頼もしくもあり、少し安心もできた。
それにしても、姉さんは何を僕に見せたいのだろう。気になって窓の外を見た。相変わらず天気は曇りだったけど、先ほどよりかは空が明るくなっていた。どんよりとした雲の合間から、うっすらとだが朝の光が反射し始めていた。
「午後からは晴れるみたいやで。まだまだ東京も暑いねん」
姉さんも同じように窓の外を見ながら言った。暦は九月だけど、タクシーの車内もまだ冷房がかかっていた。姉さんが僕に見せたいものは案外近い場所にあった。
タクシーに乗って十分ほど経ったところで、
「もうすぐや。急に現れるから、ビックリするで」
姉さんがそう言って、フロントガラスの前方を見るように指さしてきた。平日の出勤時間帯とあって、車は渋滞気味だったが、とてつもなく広い並木の道路だった。
タクシーがゆったりと大きなカーブを曲がっていく。すると、
「ほら、あれ」
もう言わずにはいられないといった感じで、姉さんが声を張り上げて、指さした。
「おおおっ!」
「あ~、聞いたことあるわ。ベイブリッジやろ」
「それは横浜やわ」
よほど面白かったのか。姉さんがずっこけるように僕に体を寄せて、胸板をポンと叩いてきた。姉さんの桃のような香りが、体温とあいまって、一段と甘ったるく感じた。
「あ、そうなんや……どうせ、俺は田舎もんやから」
僕は姉さんにくっつかれたことにドギマギしつつも、ちょっと拗ねてみせた。
「ごめんごめん。うちも田舎もんやった」
姉さんはすぐに謝り、僕から体を離した。
僕は別に本気で拗ねたわけでもない。むしろ、嬉しかった。同じ田舎者の姉さんが今では東京の人になって、ちゃんとこの街に溶け込んでいると思えたからだ。
一年前、姉さんが東京に行くとなったとき、僕は田舎者の姉さんが都会でバカにされないか、けっこう心配していたのだ。
慣れない都会の生活で、ひとり悔しい思いをしていたら、可哀想じゃないか。
それなのに姉さんは偉そうに都会人ぶって、田舎者の僕を冷やかしてくる。頼もしくもあり、少し安心もできた。
それにしても、姉さんは何を僕に見せたいのだろう。気になって窓の外を見た。相変わらず天気は曇りだったけど、先ほどよりかは空が明るくなっていた。どんよりとした雲の合間から、うっすらとだが朝の光が反射し始めていた。
「午後からは晴れるみたいやで。まだまだ東京も暑いねん」
姉さんも同じように窓の外を見ながら言った。暦は九月だけど、タクシーの車内もまだ冷房がかかっていた。姉さんが僕に見せたいものは案外近い場所にあった。
タクシーに乗って十分ほど経ったところで、
「もうすぐや。急に現れるから、ビックリするで」
姉さんがそう言って、フロントガラスの前方を見るように指さしてきた。平日の出勤時間帯とあって、車は渋滞気味だったが、とてつもなく広い並木の道路だった。
タクシーがゆったりと大きなカーブを曲がっていく。すると、
「ほら、あれ」
もう言わずにはいられないといった感じで、姉さんが声を張り上げて、指さした。
「おおおっ!」

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