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姉枕
第1章 東京……十八歳
頭の中では、今夜、姉さんのアパートに泊めてもらうことが常によぎり、だんだんその時間が近づいてくるほど胸はトクトクと高鳴ったが、なるべく意識しないように努めていた。
僕がどんな気持ちでいようと、姉さんはもう普通の「姉」。腕を組んできたことだって、仲の良い姉弟ならあり得ることだ。
「ここ」
もっと早くからアパートは見えていたはずなのに、目の前に到着してから、姉さんは教えてくれた。
くすんだピンク色の外観の二階建ての鉄筋アパートだった。
一階と二階にそれぞれ三部屋あり、鉄製の外階段がついていた。姉さんからの手紙で、二〇三号室に住んでいることは知っていた。
外階段を上って、一番奥の部屋の前まで進んだ。
姉さんがハンドバッグから鍵を取り出す。姉さんの横顔を見ると、どことなくこわばっていた。
姉さんの白い手が、鍵穴に差し込んだ鍵を、回した。
「どうぞ」
やはり姉さんも意識しているように思えた。
つっけんどんな言い方で、そう口にするのが精一杯という感じに聞こえた。
僕は姉さんに申し訳ない気持ちになった。姉さんを困らせてしまっているのではないか。
玄関のドアが開くと、姉さんの髪の毛から漂っていた桃のような甘い香りが、より濃密になって、僕の鼻腔をくすぐった。
「うん。えっと、お邪魔します」
僕は必死に平静を装おうとしていた。
わざと丁寧な言い方をして、姉さんに突っ込ませようとした。
だけど姉さんは何もいわず、先に部屋の中に入ってしまった。
姉さんに続いて、僕は人が一人やっと立てる程度の狭いタタキでスニーカーを脱ぐ。
手紙にも書いてあったが、姉さんの部屋はロフト付きのワンルームで、お風呂とトイレは別。小さいながらも綺麗な台所があるそうだ。
純粋に姉さんの部屋を見たいという欲望もあったが、まだ帰ってきたばかりとあって、室内は電気がついていなかった。
「姉さん、電気は? ロフトってどれ?」
僕は緊張を隠して、姉さんに話しかけた。
「こっち」
奥の部屋から声がして、僕は暗がりのなか進んでみた。いっそう、桃のような甘い香りが強くなる。足元も心地良い。うちの実家のようなささくれた畳ではなく、フローリングでカーペットが敷いてあった。
「姉さん?」
僕がどんな気持ちでいようと、姉さんはもう普通の「姉」。腕を組んできたことだって、仲の良い姉弟ならあり得ることだ。
「ここ」
もっと早くからアパートは見えていたはずなのに、目の前に到着してから、姉さんは教えてくれた。
くすんだピンク色の外観の二階建ての鉄筋アパートだった。
一階と二階にそれぞれ三部屋あり、鉄製の外階段がついていた。姉さんからの手紙で、二〇三号室に住んでいることは知っていた。
外階段を上って、一番奥の部屋の前まで進んだ。
姉さんがハンドバッグから鍵を取り出す。姉さんの横顔を見ると、どことなくこわばっていた。
姉さんの白い手が、鍵穴に差し込んだ鍵を、回した。
「どうぞ」
やはり姉さんも意識しているように思えた。
つっけんどんな言い方で、そう口にするのが精一杯という感じに聞こえた。
僕は姉さんに申し訳ない気持ちになった。姉さんを困らせてしまっているのではないか。
玄関のドアが開くと、姉さんの髪の毛から漂っていた桃のような甘い香りが、より濃密になって、僕の鼻腔をくすぐった。
「うん。えっと、お邪魔します」
僕は必死に平静を装おうとしていた。
わざと丁寧な言い方をして、姉さんに突っ込ませようとした。
だけど姉さんは何もいわず、先に部屋の中に入ってしまった。
姉さんに続いて、僕は人が一人やっと立てる程度の狭いタタキでスニーカーを脱ぐ。
手紙にも書いてあったが、姉さんの部屋はロフト付きのワンルームで、お風呂とトイレは別。小さいながらも綺麗な台所があるそうだ。
純粋に姉さんの部屋を見たいという欲望もあったが、まだ帰ってきたばかりとあって、室内は電気がついていなかった。
「姉さん、電気は? ロフトってどれ?」
僕は緊張を隠して、姉さんに話しかけた。
「こっち」
奥の部屋から声がして、僕は暗がりのなか進んでみた。いっそう、桃のような甘い香りが強くなる。足元も心地良い。うちの実家のようなささくれた畳ではなく、フローリングでカーペットが敷いてあった。
「姉さん?」

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