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姉枕
第1章 東京……十八歳
姉さんが繁華街の途中で右に折れる小道に入った。路地のような狭い通りで、侘しげな光を放つスナックやラウンジ、小料理屋がびっしりと密集していた。いかにも大人の空間といった感じで、僕一人だったら、ちゅうちょする路地だ。でも、姉さんは通い慣れた道とあって、すたすたと歩く。姉さんは、すっかり阿佐ヶ谷の街に溶け込んでいた。その路地を抜けて、さらに歩くこと数分。あたりは一変した。ネオンの代わりに、青白い街灯が並ぶ住宅街となっていた。
「姉さんのアパートはもうすぐ?」
僕は言った。
「へ? ああ……そうやね」
あれ、と思った。姉さんの声のトーンが急に下がったからだ。ひとけが少なく、あたりも静かな場所だからか。あまり大きな声で話すのは良くないのかもしれない。
住宅街といっても一車線の狭い通りで、古びたアパートが多かった。壁が蔓まみれの幽霊屋敷のようなおんぼろアパートもあり、ブロック塀の上に丸々と太った黒猫が寝そべっていた。黒猫は僕と姉さんがそばを通っても逃げることなく目を光らせて、こちらを見ていた。
コツコツコツ、と姉さんのヒールの音が響き渡っていた。
なんとなく姉さんの口数が減ったように思えた。僕もにわかに緊張していた。
先ほどまであんなに積もる話があったのに、何を喋ればいいのかわからなくなってきた。
気づくと僕はうつむき、地面を見ながら歩いていた。
街灯の下を通ると、僕と姉さんの二人の影が浮かんだ。
細身になったワンピース姿の姉さんのシルエット。ウエスト部分がキュッと細くて、それでいてお尻はふっくらと大きい。
服装のせいかもしれないが、姉さんの体つきは弟の僕から見ても魅力的だった。
そう、僕は意識していた。
ずっと意識はしていたけど、いよいよ姉さんのアパートに行くのだと思うと、気持ちが落ち着かなくなった。いや、正直に言うと、東京に行こうと決意したときから、この瞬間を待っていた。一年ぶりに同じ屋根の下で夜を過ごせる、この瞬間を。
姉さんはどう思っているのだろうか。今朝、一年ぶりに姉さんと会ったとき、僕は正直、怖じ気づいてしまった。
「姉さんのアパートはもうすぐ?」
僕は言った。
「へ? ああ……そうやね」
あれ、と思った。姉さんの声のトーンが急に下がったからだ。ひとけが少なく、あたりも静かな場所だからか。あまり大きな声で話すのは良くないのかもしれない。
住宅街といっても一車線の狭い通りで、古びたアパートが多かった。壁が蔓まみれの幽霊屋敷のようなおんぼろアパートもあり、ブロック塀の上に丸々と太った黒猫が寝そべっていた。黒猫は僕と姉さんがそばを通っても逃げることなく目を光らせて、こちらを見ていた。
コツコツコツ、と姉さんのヒールの音が響き渡っていた。
なんとなく姉さんの口数が減ったように思えた。僕もにわかに緊張していた。
先ほどまであんなに積もる話があったのに、何を喋ればいいのかわからなくなってきた。
気づくと僕はうつむき、地面を見ながら歩いていた。
街灯の下を通ると、僕と姉さんの二人の影が浮かんだ。
細身になったワンピース姿の姉さんのシルエット。ウエスト部分がキュッと細くて、それでいてお尻はふっくらと大きい。
服装のせいかもしれないが、姉さんの体つきは弟の僕から見ても魅力的だった。
そう、僕は意識していた。
ずっと意識はしていたけど、いよいよ姉さんのアパートに行くのだと思うと、気持ちが落ち着かなくなった。いや、正直に言うと、東京に行こうと決意したときから、この瞬間を待っていた。一年ぶりに同じ屋根の下で夜を過ごせる、この瞬間を。
姉さんはどう思っているのだろうか。今朝、一年ぶりに姉さんと会ったとき、僕は正直、怖じ気づいてしまった。

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