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姉枕
第1章 東京……十八歳
先を歩いていた姉さんが振り返り、ちょっとムッとした表情で手招きした。
キョロキョロしていたのがいけなかったのか、僕は飼い犬のようにちょこちょこと姉さんの横にすり寄った。
「ごめんごめん。なんや、ここはここで、ごみごみしていて、おもろいなぁ!」
「そんなことより、あんた、さっき変な人が近寄ってきていたの、わからんかった?」
「へ? どこ?」
振り返ると、ひとめで変な人らしき人物を見つけた。『花びら2回転 5000円ポッキリ』と書かれた、でっかい看板を持っている小汚い中年男だ。
「あの看板持っている人のことか?」
「そう」
「花びらって何?」
「知らないけど。たぶん、あれは男の人が行くいかがわしいお店よ」
「あ、風俗ってやつ?」
風俗というエッチな店があることは知っていたけど、あんなにも堂々と街中で宣伝しているとは思わなかった。
「じろじろ見ない!」
姉さんがまたしても僕の脇腹を小突いた。
「ごめん。ねえ、姉さんは毎日、この道を通っているん?」
「そうやで。この道が一番近いねん。コンビニもあるし、薬局もあるから、便利やで」
「へえ~」
うなずきながら、僕はあらためて街の風景を眺めた。
僕の知らない一年間、姉さんが毎日この景色を見ながら、出勤して、帰宅していたのか。
ふいに妄想がふくらみ、微笑ましい気持ちになった。
「朝寝坊する?」
僕は聞いた。
「へ? なんで?」
「いや、姉さんが寝坊して、この道をバタバタ走っている姿が思い浮かんだから」
「アホ。あんたと違うねん。私は一回も寝坊したことないで」
「ほんまに!?」
「はるは、寝坊するんか?」
「たまに……とくに姉さんがいなくなってからは、誰も起こしてくれへんからなぁ」
「あかんやろ! だいたい、私がいないから寝坊するとか、言い訳やで!」
周りは酔っ払いのダミ声が響いていた。それに負けないぐらいの剣幕で、姉さんは僕を叱ってきた。だけど、それすらも僕は嬉しかった。毎朝、姉さんに怒鳴られてたたき起こされていた日々を思い出していた。
「こっち、こっち」
キョロキョロしていたのがいけなかったのか、僕は飼い犬のようにちょこちょこと姉さんの横にすり寄った。
「ごめんごめん。なんや、ここはここで、ごみごみしていて、おもろいなぁ!」
「そんなことより、あんた、さっき変な人が近寄ってきていたの、わからんかった?」
「へ? どこ?」
振り返ると、ひとめで変な人らしき人物を見つけた。『花びら2回転 5000円ポッキリ』と書かれた、でっかい看板を持っている小汚い中年男だ。
「あの看板持っている人のことか?」
「そう」
「花びらって何?」
「知らないけど。たぶん、あれは男の人が行くいかがわしいお店よ」
「あ、風俗ってやつ?」
風俗というエッチな店があることは知っていたけど、あんなにも堂々と街中で宣伝しているとは思わなかった。
「じろじろ見ない!」
姉さんがまたしても僕の脇腹を小突いた。
「ごめん。ねえ、姉さんは毎日、この道を通っているん?」
「そうやで。この道が一番近いねん。コンビニもあるし、薬局もあるから、便利やで」
「へえ~」
うなずきながら、僕はあらためて街の風景を眺めた。
僕の知らない一年間、姉さんが毎日この景色を見ながら、出勤して、帰宅していたのか。
ふいに妄想がふくらみ、微笑ましい気持ちになった。
「朝寝坊する?」
僕は聞いた。
「へ? なんで?」
「いや、姉さんが寝坊して、この道をバタバタ走っている姿が思い浮かんだから」
「アホ。あんたと違うねん。私は一回も寝坊したことないで」
「ほんまに!?」
「はるは、寝坊するんか?」
「たまに……とくに姉さんがいなくなってからは、誰も起こしてくれへんからなぁ」
「あかんやろ! だいたい、私がいないから寝坊するとか、言い訳やで!」
周りは酔っ払いのダミ声が響いていた。それに負けないぐらいの剣幕で、姉さんは僕を叱ってきた。だけど、それすらも僕は嬉しかった。毎朝、姉さんに怒鳴られてたたき起こされていた日々を思い出していた。
「こっち、こっち」

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