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父に刻印された身体
第5章 痛みが理性を狂わせる夜
レントゲン室から出され、手渡されたフィルムには幸いにも骨折の影はなかった。診断は左手首の捻挫。
靭帯が引き伸ばされたことによる軽い損傷で、「全治数週間といったところですね。無理をせず安静にしてください」という医師の穏やかな声に、私は胸を撫で下ろした。けれど、脈打つように手首の奥で疼く鈍痛が、これから訪れる不自由な生活を現実のものとして突きつけてくる。
処置室のベッドに腰掛けると、看護師が「プライトン」と呼ばれるキャスト材を用意した。お湯で温められ、フニャフニャと柔らかくなった白い素材が、私の左手首から手の甲にかけて手際よくあてがわれる。
じんわりとしたお風呂のような温もりが肌に伝わり、それが時間の経過とともに冷えて固まり、私の手首のラインそのままの形にカチカチに強固になっていく。
仕上げに上から包帯が手際よく巻きつけられると、私の左腕は重厚な殻の中に固められ、指先だけが頼りなく覗く無骨な姿へと変貌した。
少しでも手首を捻ろうものなら、関節の奥からじんじんと嫌な痛みが走る。
自分の体でありながら、まるで石膏の塊をぶら下げているかのような違和感。使えないと頭では理解していても、ふとした拍子に左手を出そうとしてしまい、そのたびに走る激痛に私は何度も眉をひそめた。
「……しばらく、一人じゃ何をするにも不自由だな」
車を運転しながら、信号待ちの合間に父が呟いた。
その声には、私の怪我を痛ましがる親心と、それ以上に「着替えや風呂など、自分が世話をしなければ生きていけない」という現実に気づいてしまった、動揺と戸惑いが滲んでいた。
何か重要な言葉を言いかけては飲み込むように、父はハンドルを握る手をこわばらせ、私の腕に巻かれた白い包帯を、どこか熱を帯びた眼差しで見つめていたのだった。
靭帯が引き伸ばされたことによる軽い損傷で、「全治数週間といったところですね。無理をせず安静にしてください」という医師の穏やかな声に、私は胸を撫で下ろした。けれど、脈打つように手首の奥で疼く鈍痛が、これから訪れる不自由な生活を現実のものとして突きつけてくる。
処置室のベッドに腰掛けると、看護師が「プライトン」と呼ばれるキャスト材を用意した。お湯で温められ、フニャフニャと柔らかくなった白い素材が、私の左手首から手の甲にかけて手際よくあてがわれる。
じんわりとしたお風呂のような温もりが肌に伝わり、それが時間の経過とともに冷えて固まり、私の手首のラインそのままの形にカチカチに強固になっていく。
仕上げに上から包帯が手際よく巻きつけられると、私の左腕は重厚な殻の中に固められ、指先だけが頼りなく覗く無骨な姿へと変貌した。
少しでも手首を捻ろうものなら、関節の奥からじんじんと嫌な痛みが走る。
自分の体でありながら、まるで石膏の塊をぶら下げているかのような違和感。使えないと頭では理解していても、ふとした拍子に左手を出そうとしてしまい、そのたびに走る激痛に私は何度も眉をひそめた。
「……しばらく、一人じゃ何をするにも不自由だな」
車を運転しながら、信号待ちの合間に父が呟いた。
その声には、私の怪我を痛ましがる親心と、それ以上に「着替えや風呂など、自分が世話をしなければ生きていけない」という現実に気づいてしまった、動揺と戸惑いが滲んでいた。
何か重要な言葉を言いかけては飲み込むように、父はハンドルを握る手をこわばらせ、私の腕に巻かれた白い包帯を、どこか熱を帯びた眼差しで見つめていたのだった。

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