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父に刻印された身体
第4章 父の瞳に火を灯す夜
週末、父と二人で訪れた映画館からの帰り道。
街灯が灯り始めた街並みを並んで歩く私たちの間には、通り過ぎる雑踏とは無縁の、密やかで張りつめた空気が漂っていた。
ふと、私は歩みを止め、ガラス越しに柔らかい光を放つショーウィンドウの前に佇んだ。中に飾られた小物を覗き込み、少女のような無垢な歓声を上げる。
「わあ……お父さん、これすごく可愛い」
小首を傾げて覗き込む私のすぐ隣で、父はポケットに手を突っ込んだまま、どこか落ち着かない様子で佇んでいた。
「……そうか?」
興味を惹かれない振りをした短く掠れた返事。けれど、背後から私を見つめる父の視線には、明らかな熱と戸惑いが混ざり合っているのを、私は背中の皮膚で敏感に感じ取っていた。
満足したように立ち上がると、私はごく自然な動きで、すれ違う人を避けるふりをしながら父の袖口に手を伸ばした。
ほんのわずか、父の腕に自分の手を重ねる。
指先から伝わる父の腕の太さと、服越しでもわかる確かな体温。その瞬間、父の腕が跳ねるように硬直した。
あえてそれ以上は追わず、さっと素早く手を離す。
父は何も言わず、逃げるように視線を前方に送ると、どこか早足で歩き出した。
けれど、黒髪の間から覗く父の耳たぶが、朱色のように赤く染まっているのを、私は見逃さなかった。
(やっぱり……意識してる)
歩幅を合わせて父の後ろ姿を追いかけながら、私は胸の奥で密やかに微笑んだ。
言葉で拒絶しようとも、身体は私を「ただの娘」として扱えなくなっている。父が隠そうとすればするほど、その赤い耳が、私への甘い降伏の証に見えて仕方がなかった。
街灯が灯り始めた街並みを並んで歩く私たちの間には、通り過ぎる雑踏とは無縁の、密やかで張りつめた空気が漂っていた。
ふと、私は歩みを止め、ガラス越しに柔らかい光を放つショーウィンドウの前に佇んだ。中に飾られた小物を覗き込み、少女のような無垢な歓声を上げる。
「わあ……お父さん、これすごく可愛い」
小首を傾げて覗き込む私のすぐ隣で、父はポケットに手を突っ込んだまま、どこか落ち着かない様子で佇んでいた。
「……そうか?」
興味を惹かれない振りをした短く掠れた返事。けれど、背後から私を見つめる父の視線には、明らかな熱と戸惑いが混ざり合っているのを、私は背中の皮膚で敏感に感じ取っていた。
満足したように立ち上がると、私はごく自然な動きで、すれ違う人を避けるふりをしながら父の袖口に手を伸ばした。
ほんのわずか、父の腕に自分の手を重ねる。
指先から伝わる父の腕の太さと、服越しでもわかる確かな体温。その瞬間、父の腕が跳ねるように硬直した。
あえてそれ以上は追わず、さっと素早く手を離す。
父は何も言わず、逃げるように視線を前方に送ると、どこか早足で歩き出した。
けれど、黒髪の間から覗く父の耳たぶが、朱色のように赤く染まっているのを、私は見逃さなかった。
(やっぱり……意識してる)
歩幅を合わせて父の後ろ姿を追いかけながら、私は胸の奥で密やかに微笑んだ。
言葉で拒絶しようとも、身体は私を「ただの娘」として扱えなくなっている。父が隠そうとすればするほど、その赤い耳が、私への甘い降伏の証に見えて仕方がなかった。

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